[III-P03-2-01] 心室形態による肺血管拡張剤の薬効の検討
キーワード:肺血管拡張剤, 心室形態, 側副血管
【背景と目的】failing Fontan 症例は末梢肺小動脈の病理変化の類似性,肺血管抵抗の上昇から小児肺高血圧性血管疾患として捉えられ,肺血管拡張剤(PVD)が広く使用されている.我々はPVDによりFontan症例で心臓MRIから得られる側副血管血流量(SPCF)が増大する事を報告した.二心室修復(B群)とFontan修復(F群)でPVDの薬効を比較検討した報告はなく,今回,PVDを使用した症例を対象に調査した.【方法】当院でPVDの導入前後で手術介入はなく,内服前後で心臓カテーテル検査を施行した60名(F群42名,B群18名),心臓MRI検査を施行した32名(F群25名,B群7名)を対象とし,心カテでの左右肺動脈圧(PAP),肺動脈楔入圧(PAWP),経肺圧格差(TPG),肺血管抵抗指数(RpI),肺体血流比(Qp/Qs),心臓MRIでのQp/Qs,SPCFと各々の項目における内服前後の変化をマンホイットニーU検定で比較検討した.【結果】対象の検査時年齢は心カテ(F群8.76±4.91,B群4.90±4.31歳),MRI(F群9.04±4.96,B群8.82±4.85歳).内服前後の心カテ結果を比較するとF群でPAP,TPG,RpI,B群でRpIのみが有意に低下し(全てP<0.01),B群のPAP,TPGは低下する傾向を認めた(PAP(左/右)P=0.07/0.11,TPG(左/右)P=0.06/0.13).内服前後の変化(差)を2群比較するとF群の方が有意にRpIとRPAPの低下を認めた(P<0.01,P=0.04).内服前後でQp/Qsは心カテ・MRI共に各々の群では有意差はなかったが,内服前後の変化(差)を2群比較するとMRIで得られたQp/QsはF群の方が有意に増大し,SPCFの増大も認めた(共にP<0.01).【考察】F群はB群と異なり肺循環を担う心室がないため側副血管が増生しやすく,キャパシタンスの増加によりPVDの効果がより強く得られる.【結論】PVDは二心室修復よりもFontan症例に有効に作用するため,投与は慎重に行い,側副血管の増生に伴う心負荷の増加に常に留意する必要がある.