第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

冠動脈・弁疾患

ポスター発表(III-P03-3)
冠動脈・弁疾患

2024年7月13日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:安藤 誠(金沢医科大学 小児外科)

[III-P03-3-03] 乳児特発性僧帽弁腱索断裂を発症した機能的単心室の一例

菅野 幹雄1, 篠原 健太1, 本間 友佳子2, 松本 遼太1, 山本 正樹1, 北市 隆1, 早渕 康信2, 秦 広樹1 (1.徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野, 2.徳島大学大学院医歯薬学研究部 小児科学分野)

キーワード:乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 機能的単心室, 僧帽弁置換

6ヶ月男児.三尖弁閉鎖、肺動脈閉鎖に対し日齢9にBT shuntを施行し,以後は外来にて経過観察.経過中に心機能の問題はなかったが,6ヶ月時に感冒を契機に急激に哺乳不良を認め緊急入院.低酸素血症,循環不全を呈したためICUに入室し挿管管理を要した.
当初心収縮は保たれていたが,経時的に僧帽弁逆流が増加。発症より6日後の心エコーでは僧帽弁後尖の腱索断裂及び同部から重度の逆流を認めた。このため緊急手術を施行した.
手術は胸骨正中切開下,人工心肺下,心停止下に施行.心房中隔欠損を拡大した上で僧帽弁に到達した.僧帽弁後尖の腱索は1本断裂しており、他にも断裂寸前の腱索を数本認めた.また前乳頭筋は外観上斑状に変性していた.加えて前後尖ともに弁尖に加えて弁輪の一部にも黄色に変性した部分を認めた.弁形成については組織が非常に脆弱であり断念.最終的にはφ18mmの機械弁に置換した.人工心肺からの離脱はスムーズで一期的な閉胸は可能であった.しかし心機能の回復は緩やかであり,挿管・再挿管を繰り返し人工呼吸器からの離脱が困難であった.このため心臓カテーテル検査を施行.肺動脈圧:20/16(18),肺血管抵抗:2.88wood単位であった.強心剤依存が持続したため第42病日に両方向性グレン手術を施行.術後経過は比較的良好で第4病日に人工呼吸器より離脱.以後の経過は比較的良好であった.術後の上大静脈圧は最終的には11mmHgであった.現在は外来にて経過観察中で僧帽弁位の人工弁機能も特に問題なし.Fontan手術待機中である.
乳児特発性僧帽弁腱索断裂はウイルス感染や何らかの免疫学的異常が契機となり発症するとされているが,詳細な原因は不明である.また病態の進行は急激であり治療に難渋することも多い.特に機能単心室例では低酸素血症や容量負荷,冠灌流低下などの問題も含め,より病態が深刻となるため迅速な病態判断が必要であった.