[III-P03-3-05] 大動脈弓離断症術後6年目に施行した大血管間走行を伴う左冠動脈右冠動脈洞起始に対してunroofingを行った一例
キーワード:冠動脈対側冠動脈洞起始(AAOCA), intramural course, unroofing
【背景】冠動脈対側冠動脈洞起始(anomalous aortic origin of coronary artery: AAOCA)は、左右の冠動脈が対側冠動脈洞から起始し、心筋虚血や突然死を来し得る先天異常で、その殆どが孤立例である.大血管間走行や、虚血症状を伴う症例では外科手術が推奨されている.大動脈壁内走行(intramural course)に対するunroofingは良好な成績が示されている一方、commissureを超えた切開による術後ARの発生や、遠隔期の突然死や虚血症状の残存などの報告もある.今回、大動脈離断症・大動脈肺動脈窓(IAA/APW)術後のAAOCAに対してunroofingを行った一例を経験した.【症例】6歳女児.生後2ヶ月の時にIAA/APWに対して、APW閉鎖、大動脈弓再建(end-to-side anastomosis)、肺動脈再建術を施行した.心エコーや造影検査でLCAが右冠動脈洞(RCC)起始であり、大血管間のintramural courseを走行するAAOLCA-IA(inter-arterial course)と判明.無症候であったが心筋虚血のリスクの高いmalignant courseで、冠動脈造影でもintramural courseで明らかな狭窄を伴っており、薬剤負荷心筋シンチでV4-6のST低下を認めた.手術はAAOLCAに対するunroofingと肺動脈狭窄に対する肺動脈形成術を施行した.術中所見ではRCCに開口したLCA入口部はスリット状で狭く、RCC/LCC交連の裏を経てLCC側にintramural courseを走行していた.RCC/LCC交連部を削ぎ落してintramural courseを開放し内膜固定を行い、落とした交連は元の位置に再固定を行った.術後の冠動脈イベントはなく、ARや心電図変化も認めなかった.術後心エコーや造影検査でLCAの狭窄解除が得られたことを確認した.【結語】大血管間のintramural courseを走行するAAOLCAは心筋虚血のリスクが高く外科手術が推奨される.今回、IAA/APW術後のAAOLCA-IAに対してunroofingを行い、術後冠動脈イベントやARなく良好な手術成績が得られた一例を報告する.