[III-P03-3-09] 異なる経過を辿った新生児重症大動脈弁狭窄症の2例
キーワード:大動脈弁狭窄症, 大動脈弁形成術, 新生児
【緒言】重症大動脈弁狭窄症(cAS)について、二心室修復(BVR)と単心室修復の決定に難渋することがある。当院では正常弁尖を有効利用する目的から、新生児期の大動脈弁への介入として大動脈弁形成術(AVP)を主に選択する。胎児診断なく当科入院となり、AVP前後に異なる経過を辿った2例を提示する。【症例1】在胎40週、出生体重2670g、男児。日齢4に心雑音を主訴に地域病院へ紹介され、心不全症状が進行し、日齢10に当院へ搬送された。PDAはなく、LVDD 24mm(Z=3.8)、EF 46%、大動脈弁輪径(AVD) 4.9mm(Z=-2.5)、大動脈弁最大流速(AS-V)=3.7m/s、高度僧帽弁逆流(MR)、MR圧較差(MRPG)=78mmHgであった。日齢16にAVPを行われたが、左房圧上昇により人工心肺装置から離脱できず、大動脈-肺動脈間開窓術、両側肺動脈絞扼術(bPAB)及び心房中隔欠損孔(ASD)拡大術を追加された。その後も左心機能は十分でなく、Norwood及びGlenn手術を経てFontan型手術を行われた。術後4年でLVDD Z=-4.0に縮小し、EF 74%で良好な循環を維持している。【症例2】在胎39週、体重3136g、男児。日齢2にductal shockの診断で当院へ救急搬送された。LVDD 32mm(Z=7.8)、EF 18%、AVD 4.3mm(Z=-3.9)、AS-V=2.1m/s、中等度MR、MRPG=54mmHgの所見であり、順行性血流は腕頭動脈まで到達した。左心機能を危惧され、プロスタグランジンE1(PGE1)投与下に経皮的心房中隔裂開術、bPABを選択された。LVDD Z=7.8→3.8と縮小、EF 18→23%と改善し、BVRの可能性を考えられた。左心機能を確認しながら、経皮的大動脈弁拡張術、AVPを段階的に進められた。PGE1は中止可能であり、LVDD 21.7mm(Z=1.4)、EF 65%に改善、ARなし、軽度MRの状態で二心室循環を維持している。【まとめ】術前エコー指標のみでは長期的な治療目標の決定が困難な場合がある。AVPのみでなく、bPABやASD拡大を段階的に行い、左室サイズ適正化によるEF改善を図ることで二心室修復を目指せる可能性がある。