第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスター発表(III-P03-4)
その他2

2024年7月13日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:北川 篤史(北里大学医学部小児科学)

[III-P03-4-04] 急激に発症したアントラサイクリン系抗がん剤の心毒性による心不全の一例

町原 功実, 卜部 馨介, 岸 勘太, 片山 大資, 蘆田 温子, 小田中 豊, 尾崎 智康, 井上 彰子, 芦田 明 (大阪医科薬科大学病院 小児科)

キーワード:アントラサイクリン, 心毒性, 心筋症

【緒言】小児がん患者の先進国における5年生存率は80%を超えるようになっている。一方でドキソルビシン(DXR)などのアントラサイクリン(ATC)系抗がん剤の心毒性が生存率に影響するといわれている。【症例】11歳女児。【経過】X‐1年6月より腰椎原発のEwing肉腫に対して、DXR総投与量375mg/m2とシクロホスファミド総投与量8400mg/m2を含む多剤併用化学療法と腰椎への局所陽子線照射での治療を開始し、X年2月に治療終了。10月19日の定期外来受診後より体育祭の練習が始まり、その頃から労作時の胸痛、倦怠感を自覚していたが、安静により消失するため自宅で様子をみていた。10月29日、胸部違和感が持続していたため当院救急外来を受診した。受診時、脈拍:140回/分、血圧:108/64mmHg。胸部聴診で奔馬調律、Levine1/6の収縮期雑音を聴取した。血液検査でBNP:1132.4pg/ml、トロポニン‐I:43.1pg/ml。胸部X線検査でCTR58%。心エコーでLVEF:23%、 Left ventricular global longitudinal strain(LVGLS):-3%。DXRの心毒性による急性心不全と診断し緊急入院となった。利尿薬、ACE阻害剤、ジゴキシンにより治療を開始。血圧低下なく、カルベジロールを少量から開始し漸増した。心エコー所見は徐々に改善し、治療開始2ヶ月でLVEF:35%、LVGLS:7.5%程度まで回復した。カルベジロールを0.12mg/kg/dayまで増量し、12月21日に退院とした。退院後もカルベジロールを漸増し、現在、治療開始後2年でLVEF:47%、LVGLS:13%程度まで改善しており、BNPは正常値化している。【考察】本症例は、性別・投与量などいくつかのリスクファクターを有し、比較的早期に急激な経過で心不全を呈した。様々なリスクを考慮した密なフォローによる早期発見・早期予防が重要である。また、心不全に対してはカルベジロールが効果的であったが、心機能の回復はプラトーとなり、長期的な管理が重要と考えられる。