[III-P03-4-06] SGLT2阻害剤とアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬を導入した不整脈源性右室心筋症による小児の重症心不全症例
キーワード:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬, SGLT2阻害剤, 不整脈源性右室心筋症
【緒言】成人心不全の治療においてSGLT2阻害剤, アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は高い推奨とエビデンスを有する薬剤であるが、小児の重症心不全症例に対する使用報告はまだ少ない。【症例】12歳男児。既往歴に特記すべき事項はなし。小学校1年生の学校心臓検診では異常は指摘されず。小学校5年生のときに学校で心肺停止となり学校内でAEDが使用されその後搬送。入院後の精査で不整脈源性右室心筋症(ARVC)と診断。入院中にICDを導入、心不全はACE阻害剤、β遮断薬、利尿剤を投与して管理し約1か月の入院後に退院。その後の経過は安定していたが退院後6か月でICDが作動。その後、動悸を自覚する頻度が高くなったため入院加療とした。入院時の体重は約2kg増加、心エコーでの心機能に著変はなかったが胸部X線では心拡大が進行しており心不全療法の強化が必要と考えられた。入院7日目エナラプリル7.5mg/dayの内服を中止。入院8日目サクビトリルバルサルタン50mg1日1回で導入、入院14日目100mgまで増量したが臨床的に問題となる血圧低下は確認されず経過した。入院26日目エンパグリフロジン10mg1日1回で導入、その後もARNI, SGLT2阻害剤に起因すると思われる副作用は認められず経過し、入院31日目に退院。NT-proBNPは入院時1353pg/dlから退院時552pg/dlまで低下。利尿剤は入院時のフロセミド40mg から20mg服用まで減量できた。【考案】ARVCによる重症心不全例に対しARNI, SGLT2阻害剤を用いて治療した。副作用は確認されず投与後から利尿剤の減量が可能となった。ARNI, SGLT2阻害剤ともに小児の重症心不全でも成人同様に効果が期待できる薬剤という印象が得られた。