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[学校保健体育-A-01] 大学における体育授業によって学習が可能な身体的リテラシー
中央教育審議会(2018)による『2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』が契機となって高等教育の改革が進められている。改革の内容は、「初等中等教育と高等教育の接続のあるべき姿」や「教員が『何を教えたか』から、学修者が『何を学び、身に付けることができたのか』への転換を図ること」等である。これらの改革に伴って大学における体育授業は、学生に対して何を提供することができるのか。本発表では大学における体育授業によって学習が可能な身体的リテラシーについて提案する。身体的リテラシーは、M.Whitehead(2019)によって「生涯にわたって継続して身体的活動を行うことを評価し責任を負う動機、自信、身体的能力、知識及び理解」と簡潔に説明されている。高橋・畑(2021)によれば、身体的リテラシーの獲得によって自己の身体と他者に対応する能力を高めることが期待されるという。そのためには、ローレンス(2016)の「身体化された学習」から身体的リテラシーを捉え直して、学習方法を一般化する必要があるという。また、久保田(2021)によれば、小学校から高等学校を通じて系統立てた学習が可能なバレーボールのスパイクを教材とした大学における体育授業では、学習者のスパイク技術に対する理解度の差によって技術の習得が異なるため、指導者は彼らに対して技術習得に必要な知識を理解できるように指導し、比較的単純な技術練習を反復させて指導することが重要であるという。この指摘は学修者と授業者との関わり方の転換を示しているといえるだろう。大学における体育授業では、運動技術を学ぶ具体的な方法を学修者に提示し、彼らはそれを知識として理解しつつ、自らの身体運動として実践することによって「身体化された学習」を展開すること、すなわち、身体的リテラシーとしての技術や知識を学習するという関わり方への転換が重要である。