14:25 〜 14:40
[競技スポーツ-A-04] 大学サッカー選手の危機克服プロセスの可視化
受傷経験に着目して
本研究の関心事は、大学サッカー選手が直面している危機を克服していくプロセスの可視化をすることにある。本事例で紹介する選手は、受傷経験をきっかけに「今まで出来ていたのにパスを出す際のボールを蹴る強さが分からなくなった」と語り、休部に至った。サッカー選手にとって、ボールを蹴る強さが分からなくなるという事は、競技継続の危機に瀕した状態であるかもしれず、ひいてはドロップアウトしてしまう可能性も含まれている。一方で、そうした危機に直面することが転機となり、その経験を語りによって肯定的に意味づけることで心理的な成熟につながるという報告もされている(杉浦、2001;2004)。しかし、そこでは語られた内容や特徴は示されているものの、選手が具体的に危機経験をどのように意味づけていったのかというプロセスは定かになっていない。危機を克服していくには、選手がどのように危機経験を意味づけていくのかということを構造的に理解していくことが求められる。今まさに危機に直面し、悩み苦しんでいる選手の語りに耳を傾けることは、危機克服プロセスのさらなる理解を深める一助となるに違いない。そこで本研究では、「大学サッカー選手は危機経験をどのように意味づけていくのか」というリサーチクエスチョンを設定し、受傷経験をきっかけに休部に至り、現在も復帰出来ていない大学サッカー選手1名に対して、50分程度の1対1形式の半構造化インタビューを複数回実施することとした。そこでの会話をICレコーダーに録音し、会話内容を逐語化して発話データとし、質的なアプローチを行い概念図を生成することで、サッカー選手の危機克服のプロセスを可視化したいと考えている。