日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題A】トップアスリート養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題A】口頭発表③

2021年9月7日(火) 13:30 〜 14:40 会場15 (Zoom)

座長:須甲 理生(日本女子体育大学)

14:10 〜 14:25

[競技スポーツ-A-11] プロのダンスアーティストの創作技術と舞踊思想に関する質的研究

*三輪 亜希子1、高木 英樹2 (1. 尚美学園大学、2. 筑波大学体育系)

近年、認知科学の研究分野では人間の創造性といった非物質的で明示が難しいとされてきた領域の解明が続いている(縣・岡田、2013:阿部、2006:Weisberg,1986)。阿部(2006)は創造性が特定のアーティストの神業ではなく蓄積された実践知であると示し、縣・岡田(2013)はアーティストのフレームワーク的な思考による創作ビジョンの蓄積と発展について報告している。舞踊研究においては、作品の構造分析や著書・批評文から抽出した言語の分析を用いて創造性を明文化したものが多く報告されている(例えば、太田、2019:酒向、2018:昆野、2012)。創作技術の研究は、作品の振付や構成を具現化する際に核となる手法の構造分析が主であり、舞踊思想は作家の言説を基に社会的・歴史的・哲学的視点によるダンス観や作品観を分析したものが並ぶ。いずれも特定の舞踊家の特徴を捉えることが目的とされており、ダンスアーティストという立場の実践知に関する報告は未だ少ないのが現状である。そこで本研究は、ダンスアーティストの実践知に関する理論的構造の解明を目的とした。事実の概念化を目指すため、Corbin and Strauss(1999)を参考に、社会的現象の複雑性を維持しながらデータ上の考えを階層的に検証する質的研究に則り、調査は半構造化インタビューを採用した。インタビュー対象はプロのダンスアーティスト6名とし、対象者の選定はサトウ・春日・神崎(2019)を参考に研究者と創作現場で深い関わりのある者を選定理由とし、データの精緻な背景理解と研究者間の相互作用の質保証を図った。分析は理論生成の志向性を重視した木下(2014)のM-GTAを採用した。結果、「メソッド確立期」、「文脈からの独立」、自身の身体を素材とした「身体性の確立」、日常風景からの「観点採取」、連作による「フレームワーク」といった特徴が顕在化した。