日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題A】共生社会の実現に向けた生涯スポーツ政策と協働システムをいかに構築するか

生涯スポーツ研究部会【課題A】口頭発表①

2021年9月7日(火) 14:05 〜 15:00 会場16 (Zoom)

座長:後藤 光将(明治大学)

14:20 〜 14:40

[生涯スポーツ-A-02] 総合型地域スポーツクラブにおけるミッションの形成過程

行政主導型クラブに着目して

*柴田 紘希1、清水 紀宏2 (1. 山梨学院大学、2. 筑波大学)

総合型地域スポーツクラブ(以下、「総合型クラブ」とする)は、1995年より育成が進められてきたが近年では解散・統廃合するクラブ数が増加の一途をたどり、成長に翳りがみられる。総合型クラブの育成をめぐっては、かねてより行政が中心となって創設されたクラブ(以下、「行政主導型クラブ」とする)で住民による自発的活動への発展がなされない等の問題が指摘されてきた。また、筆者らの研究でも行政主導型クラブの成長性が低いことが明らかにされている。なぜ、行政主導型クラブ成長は鈍化・停滞するのだろうか。他方、筆者らはこれまでに総合型クラブの成長性に関連する要因を定量的に分析し、ミッションの形骸化がクラブの成長性に負の影響を及ぼすこと、ミッションの形骸化にはミッションの形成過程が関連することを明らかにした。しかし、総合型クラブにおいてそもそもどのような議論を経てミッションが形成されるのか、ミッションの形成過程は詳細に明らかにされていない。そこで、本研究では行政主導型クラブのミッションの形成過程に着目し、人々の行為や意図、背景をクラブヒストリーとして詳細に記述する。そして、なぜ行政主導型クラブでミッションの形骸化が生じ成長が鈍化・停滞するのか、その要因を考察することを目的とした。調査は関東地区に所在する行政主導型クラブを事例としてクラブの理事長等に対するインタビューと関連資料の収集を行った。調査の結果、事例クラブのミッションは規約に記載するためだけに形式的に定められており、創設時のメンバーは内容を共有し、ミッションの達成に向けて強く動機づけられているわけではなかった。その背景には、計画に基づきクラブの早期設立に向けて効率的・合理的に作業を進めようとする行政や創設メンバーの意図が影響を及ぼしており、クラブづくりの意味の共有がなされなかったことがミッションの形骸化の理由として検討された。