The 71st Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Theme)

生涯スポーツ研究部会 » 【課題A】共生社会の実現に向けた生涯スポーツ政策と協働システムをいかに構築するか

生涯スポーツ研究部会【課題A】口頭発表②

Tue. Sep 7, 2021 1:55 PM - 3:00 PM Room 17 (Zoom)

Chair: Naomi Yoshioka (Tokai University)

1:55 PM - 2:10 PM

[生涯スポーツ-A-04] オーストラリアの障害者を包摂した水泳チームに対するエスノグラフィー

*Kai Segawa1 (1. Hyogo University of Teacher Education)

日本の障害者の運動実施率は30%に満たない。一方、オーストラリアの障害者の運動実施率は53.2%と比較的高い(Australian Sports Commission、2021)。さらにパラリンピックにおけるメダルランキングは世界でも上位である。特にパラ水泳では金メダリストを多数輩出しており、草の根からトップアスリートまでの障害者に親しまれている。そのパラ水泳が普及・発展している要因に、地域のスイミングクラブで障害者が日常的に水泳練習に取り組むことができるインクルーシブな環境が関連していると考えられる。先行研究では、障害者が健常者と共に運動する環境によってパラスポーツへの早期参加が促され、パラリンピックを目指すうえで実力を伸ばしやすい可能性が示されている。しかしながら、その具体的な要因までは明らかとなっていない。そこで、本研究の目的は、オーストラリアのインクルーシブなパラ水泳環境と、パラスポーツの普及・発展との関連要因について明らかにすることとした。調査対象はオーストラリアQLD州の水泳チームⅩであり、健常スイマー約10名と障害のあるスイマー6名が所属していた。調査期間は2019年9月~2020年3月である。選手や指導者を中心に参与観察や聞き取りを行うエスノグラフィーの手法を用いてインクルーシブな水泳練習の環境に関する記述を行った。その結果、指導者の発言から、オリンピック・パラリンピックの代表選考会が同じ試合で同時に行われてきた歴史的な背景が、日常におけるインクルージョンな環境を作り上げてきたことに関連する可能性が示唆された。その大会によってパラリンピックを目指すパラ水泳選手の姿を見る機会が創出され、観戦した人や出場する健常選手の障害者に対するインクルージョンへの考えをポジティブに変容してきたと考えられる。そのため、障害者が水泳に取り組みやすい環境が育まれた可能性がある。