日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

講演情報

本部企画シンポジウム

本部企画シンポジウム2/若手研究者に求められる体育・スポーツ・健康科学の社会的使命:「学際性」のリアルとロマン

2021年9月7日(火) 10:30 〜 12:30 会場2 (Zoom)

コーディネーター:藤川 和俊(帝京平成大学)、中澤 雄飛(帝京大学)
指定討論者:菊 幸一(筑波大学)

11:50 〜 12:30

[本部企画-S2-3] 二流柔道家の“ありのまま”研究半生に学際性はあるか?

運動、武道、そしてeスポーツへ

*松井 崇1 (1. 筑波大学)

<演者略歴>
筑波大学体育専門学群(柔道部)卒業。同大学院体育科学専攻(運動生化学)修了。博士(体育科学)。新潟医療福祉大学(学振特別研究員SPD)、スペイン国立カハール研究所神経生物学部門を経て2015年より現職。全柔連科学研究部基礎研究部門長、筑波大学スポーツイノベーション開発研究センタースポーツIT分野長を兼務。
 哲学者ロラン・バルトは、「真の学際性は、1つのテーマを選びそのまわりに2、3の諸科学を集めるだけでは不十分で、どの学問領域にも属さない新しい対象を生み出すところにある」という。
 私は二流柔道家としての競技生活を送った。競技につきものである疲労の正体を暴き、なんとか克服できないか。その思いひとつで学生時代から動物実験に取り組み、ポスドク時代に細胞実験を取り入れ、今はそこに進化生物学的視点も盛り込みながら、運動疲労要因としての脳グリコーゲンの役割とそれを踏まえた疲労予防策を究明する「スポーツ神経生物学」を進める。
 現職では新たに「柔道生理学」を開始し、今は武道の教育的効果に生化学で迫る「自他共栄の科学」に挑戦中である。「バーチャルスポーツ」としてのeスポーツが柔道や武道の教育効果をどこまで再現するのかにも興味が尽きない。
 神経科学の父であるラモニ・カハールは、脳細胞を顕微鏡で観察する傍ら、天体望遠鏡で宇宙の星々を見つめ、この世界と人間の構造と機能に思いを馳せたという。一見無関係なものになぜか惹かれる。そうしたところで学際性は生まれるのかもしれない。体育学には昔も今も学際的な場であり続けて欲しい。