日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育心理学 ポスター発表

[03 心ーポー05] 観察学習時における脳活動動態の検討

〇松田 千裕1、中田 大貴2 (1.奈良女子大学院、2.奈良女子大学 )

 観察によって運動学習が進む観察学習がパフォーマンスの向上に寄与することや、その過程とともに皮質脊髄路の興奮性が低下するという報告がなされている。ヒトが他者の動きを観察する際には、脳内におけるAction Observation Networkやミラーニューロンシステムが関与していると考えられているが、これらの脳領域における観察学習時の神経活動動態については未だ議論されている。そこで本研究では、手のポーズを覚えて再現するという課題を用い、近赤外線分光法(NIRS)により酸素化ヘモグロビン濃度と脱酸素化ヘモグロビン濃度の変化を計測し、観察学習時における運動前野・一次運動野・頭頂連合野の脳活動動態を検討した。

 被験者は一般成人女性28名(平均年齢21.3±1.4歳)を対象とした。課題は、10秒の安静と20個の右手のポーズが表示される30秒の観察、その後また10秒の安静を3回繰り返した計2分半の動画を見る観察試行と、覚えたポーズを左手で再現する再現試行を実施した。それぞれを8セッション繰り返した。行動指標として、各セッションを20点満点とし、手の再現数を点数化した。NIRSは計20個のプローブ間の31個のチャンネルのうち27個のチャンネルを3つずつ(左・正中・右)、9つの対象領域に分けて分析した。

 実験の結果、再現数は5セッション目以降ほとんど伸びず、多くの被験者は5セッション目までで手のポーズを覚えられていた。運動前野において、酸素化ヘモグロビンの値の減少と左・右脳半球の運動前野における再現数との負の相関から、観察学習には特に運動前野の神経活動が関与していると考えられた。一次運動野において、酸素化ヘモグロビンの値の変化はみられなかった。頭頂連合野においては、側性による脱酸素化ヘモグロビンの値の変化の違いが見られ、側性によって観察学習における役割や機能が異なると考えられた。