[03 心ーポー07] ビデオセルフモデリングを構成する映像素材を選択する個数の違いが学習者の観察学習および練習回数へ及ぼす影響
学習者が学習課題中に環境の一部を選択すること(例:映像素材を選ぶ)で学習課題への動機づけや課題従事度へ影響することが明らかにされている。本研究は、ビデオセルフモデリング(VSM)の映像素材の選択数の違いが視聴後の学習者の課題従事度、つまり練習回数や運動学習へ及ぼす影響について検討することを目的とした。被験者60名に3-6-3カップスタッキングを3往復するテスト課題を実施し、動作時間および練習回数を記録した。被験者は自身が課題を実行する10個の映像の中から任意の映像を6つ、3つ、1つ選択する群、そして映像を選択しない群の4群に無作為に振り分けた。実験は習得期と保持期(習得期から1週間後)に分けて行った。習得期では1ブロック10試行のテスト課題を2ブロック行った。被験者は1ブロック目終了後、1往復のカップスタッキングの練習を10試行行った。練習後、映像選択する群は決められた数の映像を選び、実験者により作成されたVSMを1分間視聴した。その後、被験者は任意の回数で練習し、2ブロック目のテスト課題を実施した。なお、保持期では習得期同様にテスト課題を2ブロック行った。分析の結果、課題の動作時間について習得期および保持期でブロックの効果のみ有意であり、2ブロック目で動作時間が短くなった。習得期と保持期との差分を算出して分析した結果、選択の要因に有意傾向が見られたが、各群の間に統計的差は見られなかった。また、課題従事度も選択数の違いは見られなかった。選択行為は、それ自体が学習を高め、また選択行為は動作獲得時に認知的努力を要求する。本実験では映像選択に加えて、練習回数を自由に選択できた。そのため、両選択による学習効果が交互作用し、努力要求による負荷が増加した結果、運動学習の差異が見られなかったと推察する。今後は、課題従事度や選択の効果を評価する測度を精査して本課題を再度検討していく。