日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

講演情報

ポスター発表(専門領域別)

専門領域別 » 体育心理学

体育心理学 ポスター発表

[03 心ーポー27] 指導者―アスリート間における「信頼関係」の意味に関する探索的検討

〇内田 遼介1、寺口 司2、大工 泰裕2 (1.流通科学大学、2.大阪大学)

スポーツ指導の現場において指導者が練習中におこなう様々な行為は、指導者-アスリート間の「信頼関係」という言葉のもと、非合理的、あるいは暴力的とも思えるような内容でも問題視されない傾向にある(e.g., 南部、2019)。しかし、当事者以外の人々からすると、指導者-アスリート間の「信頼関係」とは具体的に何を意味しているのか明確ではない。そこで本研究では、指導者-アスリート間の「信頼関係」の意味について探索的に明らかにすることを目的にオンライン調査を実施した。調査対象者は一般人494名(男性217名、女性277名)で、平均年齢は39.39歳(SD=10.42)であった。調査対象者には、指導者-アスリート間の「信頼関係」という言葉を聞いて何を思い浮かべるか、思いつくかぎり箇条書きで少なくとも3件、最大で6件回答するように求めた。また、各箇条書きに対する感情価(肯定的[+1]・どちらでもない[0]・否定的[-1])も評価するように求めた。その結果、1807件の箇条書きが得られた。各箇条書きに対する感情価について、スポーツ経験の有無との間に連関が認められるか検討したが、有意な連関は認められなかった(Χ2(2)=0.76, p=.68)。しかし、性別との間に有意な連関(Χ2(2)=9.92, p<.01)が認められた。残差分析の結果、女性は男性よりも「信頼関係」を肯定的に捉える一方で、男性は女性よりも否定的に捉える傾向にあった(ps<.01)。そこで、形態素解析により全ての箇条書きを分割した後、男女別に分けて頻出語を抽出した。その結果、指導者-アスリート間の「信頼関係」から連想される言葉として、女性では「絆」や「信じる」、「気持ち」といった情緒的な意味合いを持つ言葉が確認された一方で、男性では「コミュニケーション」や「練習」、「体罰」といった指導内容に関わる言葉が確認された。