[03 心ーポー37] 在宅高齢者のQOLに影響を及ぼす身体的・精神的要因の検討
奈良県都市部・山間部の異なる地域特性に着目して
【目的】世界的に見て日本の高齢化は特に顕著である。また、日本は国土の約7割が山地であり、その山間部の暮らしや人間関係は都市部とは異なる。これらの特徴を踏まえて高齢者の自立した生活やQOLを検討することが重要である。先行研究では、QOLに影響を及ぼす要因は、身体機能や精神的健康、日常生活動作の観点から報告されているが、精神的健康をひとのネガティブな側面から捉えたものが多い。Ryff (1989)は「心理的well-being尺度」を開発し、精神的健康を「よい状態」を意味する「well-being」を用いてポジティブな側面から捉えた。本研究では、奈良県の都市部および山間部在宅高齢者を対象に、QOLに影響を及ぼす要因について、身体機能とポジティブな精神的健康の両側面から検討する。【方法】被験者は奈良市および川上村在住の60歳以上の在宅高齢者191名(奈良市:男性53名、女性62名、川上村:男性19名、女性57名)であった。QOL測定にはSF-36を用い、上位尺度である身体的(PCS)精神的(MCS)役割社会的(RCS)側面の3つを算出した。身体機能は、開眼片足立ち、ファンクショナルリーチテスト、30秒椅子立ち上がり、長座体前屈、TUG、5m歩行、握力、重心動揺面積を測定した。精神的健康には心理的well-being尺度を用いた。統計解析はQOLの上位尺度を目的変数とし、説明変数に身体機能と精神的健康の各項目を投入した強制投入法による重回帰分析を行った。【結果と考察】都市部在宅高齢者では、PCSを予測する変数として5m歩行と握力が抽出された。心理的well-being尺度からは不健康の認知と自律性がPCSの予測変数として、不健康の認知と環境制御力がMCSの予測変数に抽出された。一方、山間部在宅高齢者ではPCSの予測変数に重心動揺面積と、不健康の認知が抽出された。