日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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発育発達 ポスター発表

[07 発-ポー09] 保育士の運動遊び指導に経験年数による違いはあるのか

〇吉田 伊津美1 (1.東京学芸大学)

幼児教育における運動指導は遊びを通した指導が基本である。しかし、遊びとはかけ離れた技術指導が行われている現状も散見される。本研究は幼児を対象とする保育士の運動遊び指導について経験年数による相違を明らかにすることを目的とした。対象は東京都内の公私立保育園84園の保育士684名であった。質問紙調査は2021年2~3月に実施された。➀実際の運動遊び指導に関する51項目に対し探索的因子分析を行ったところ、「幼児主体」「保育士主導」の2因子で構成されていた。➁経験年数を1~6年(以下A群)、7~15年、16~25年、26~43年の4群に分け各因子得点を比較したところ、「幼児主体」はA群がもっとも低く経験年数が高くなるほど有意に高くなり、「保育士主導」はA群が他3群よりも有意に高かった。このことから経験年数の浅い若手の保育士は指導性が高く、自身が中心となって行う直接的教授型の運動指導を行っているのに対し、経験年数が高くなるほど幼児の主体的な活動を尊重し探求心を刺激するような環境の構成を中心とする遊びとしての実践を行っていた。➂一方、同じ項目に対し理想とする運動指導について回答を求め、各因子得点を経験年数により比較したところ、「幼児主体」「保育士主導」の両因子でA群が他3群よりも有意に高く、若手の保育士は現在の自身の運動指導に対し、より「幼児主体」、より「保育士主導」の指導が理想であると考えていた。➃さらに「幼児主体」「保育士主導」の両因子における実際の指導と理想の指導との得点差はいずれもA群がもっとも大きく、経験年数が高くなるにつれて得点差は小さくなっていた。このことから若手の保育士は遊び要素の低い保育士主導の直接教授型の運動指導を行う傾向にあるものの、遊びの重要性を認識しており、葛藤や課題を抱えている可能性が示唆された。〔本研究はJSPS科研費 JP20K11461の助成を受けた〕