[08 測ーポー08] 重心位置を前後方向および左右方向へ移動させた際の足圧中心位置の移動距離と偏差に及ぼす加齢の影響
加齢によるバランス能力の低下は転倒リスクを高めることから、動的な場面で重心位置を支持基底面内に保持する能力は転倒予防に重要である。本研究では、立位姿勢において重心位置を前後方向と左右方向に移動させた際の足圧中心動揺パラメータの変化から動的なバランス能力の加齢による影響を検討した。対象者は18~86歳までの健康な成人男女134名(男性60名、女性74名)とし、青壮年群(18~44歳)、中年群(45~64歳)、高齢群(65~86歳)の3群に男女を割り付けた。動的バランスは、重心軌跡計を用いて立位姿勢からメトロノームの合図に合わせて足圧中心位置を前後方向と左右方向に3往復させた際の移動距離と偏差で評価した。測定項目は足圧中心位置の前後方向および左右方向への移動距離、それぞれの左右および前後の偏差、移動距離と偏差で求めた動的バランス指数とした。本研究では中年群の対象者が少なかったため、男女別に各年代群をKruskal-WallisのH検定を行い、有意差がみられた場合は多重比較検定を行った。その結果、男性では前後移動時の前方向距離、前方向距離/後方向距離、女性では前後移動時の左右偏差、また、男女の前後移動時の最大距離/左右偏差(前後指数)、左右移動時の前後偏差、左右移動時の最大距離/前後偏差(左右指数)、前後指数/左右指数の中年群で有意な低下が認められた(P < .05)。男女の右方向距離/左方向距離、女性の前方向距離/後方向距離に加齢変化は認められなかった。前後方向の移動では後方向に比べて前方向の加齢変化が大きく、また、重心位置を意識的に移動させた際の加齢変化は女性に比べて男性の方が大きくなる傾向がみられた。以上のことから、立位姿勢で重心位置を前後方向および左右方向に移動させた際の足圧中心動揺パラメータで評価した動的バランス能力は男女によって加齢変化が異なることが推測される。