[09 方ーポー02] パラ陸上(低身長)・男子やり投選手の投てき動作の事例的分析
陸上競技のやり投ではやりの初速度と投てき距離との間に高い相関関係があるとされている。健常やり投選手の投動作に関する報告はあるが、パラ選手( 低身長 )に関する報告はないようである。そこで、本研究では、パラ陸上( 低身長 )・男子やり投選手の競技会における投動作を3次元DLT法により分析し、競技力向上に役立つ基礎的知見を得ることを目的とした。日本体育大学陸上競技会( 2020年8月 )および第31回日本パラ陸上競技選手権大会( 2020年9月 )において、男子やり投( F41 )に出場した選手1名の試技を2台のビデオカメラ( 120fps )で撮影し、各試合において記録の最も高かった試技と低かった試技についてリリースパラメータ、関節角度、角速度などを算出して比較した。その結果、リリースパラメータについては、各試合記録の高い試技(30.64、30.39m)では大きな初速度( 15.75、15.71m/s )がみられた。各試合で記録の良い試技では助走速度( 4.34、3.93 m/s )も大きかった。スティックピクチャーの観察から、記録の良い試技においてR-on時における左膝関節の引き出しが早いことがわかった。また、記録の低い試技では関節角度の分析から体幹の水平回転のタイミングが遅かったが、これはL-on時において左足の接地位置が関係していると考えられた。したがって、左足をより外側に開いた状態で接地することにより体幹の水平回転のタイミングが早くなると考えられる。健常選手との比較では、Rel時における体幹の前傾角度が健常選手より小さかった。これらのことから、本対象選手ではR-on時において左膝関節の引き出しを早く行うことが重要であり、また準備局面において体幹の後傾を大きくしすぎないことが有効であると考えられた。