The 71st Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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体育方法 ポスター発表

[09 方ーポー04] 講道館柔道における「形」の創出と改変に関する考察

〇Ikuko Inagawa1 (1.Nippon Sport Science University)

講道館柔道は1882(明治15)年、嘉納治五郎により創設された。現在、講道館柔道の形は、公式には投の形、固の形、柔の形、極の形、講道館護身術、五の形、古式の形の7種が定められ、うち嘉納の没後に新設されたのは講道館護身術のみである。各種の形は嘉納の没後も研究が進められ、1940(昭和15)年、講道館は「形研究会」を発足、1956(昭和31)年に極の形に現代的要素を取り入れた講道館護身術を新設し、1960(昭和35)年に投の形と固の形について、次いで1977(昭和52)年に柔の形と極の形についての統一見解を盛り込んだ小冊子(教本)を発行した。その後も細かな技法の一部が修正されるなど、進化、変遷を遂げているが、例えば施技を新たに加えたり名称を変えたりするなどの大幅な改変を伴うものではない。嘉納は晩年に至ってからも、形の発展や創設に関する種々の言説を残している。例えば、「在来の形や乱取についても、将来の研究を待って改めたいと考えて居る」(嘉納:1932)、さらに「自分の教えたことでも科学の教えに背いたことがあったら、自分のいうたことより寧ろ科学に従え」(嘉納:1934)と説くなどした。このように自身を意図的に教祖化・神格化させない態度は、柔道の「未来永劫」の発展を願うものであり、嘉納が教育者として歩んだ証左であると考えられる。武道における形は、各々の武道の核となる原理を示した文化の一形態であり、後進が軽々に変化させてはならないものである。しかし同時に、嘉納はあえて自らを絶対視させない態度をとり、折にふれその態度を表明してきた。現代の柔道人には、乱取だけでなく形に関しても、まず従来の形の研究と普及、そして新たな展開についての思考が求められる。