[09 方ーポー11] スポーツにおける空間認知に関するコツ情報の発生運動学的研究
体操競技における技の修正事例から
空間認知能力はあらゆるスポーツ種目において求められる。野球のフライキャッチ、サッカーやバスケットボールの状況把握、ラグビーにおける背後の味方選手へのパスなど、枚挙にいとまがない。体操競技では空中での身体位置把握が競技力を決定づける一要因となる。これまでの関連研究では、多くの研究者によって空中で行われる技における視覚の役割が検討され(佐藤、2008)、指導書においても、いわゆる「ムーンサルト」の実施方法は床面を視線で捉えながらひねりを合成する実施方法が推奨されている(日本体操協会、2007)。空間認知に視覚情報が重要となることに異論はないが、一方でラグビーのパスにおいて平尾(2019)は「『視認』はあくまでも事後的な確認にしかすぎない」と言い、見なくとも味方選手の位置がわかるのである。見るという行為が重要であることは大前提だが、視覚のみに頼らない状況把握を可能にする「カン」(金子、2005)が存在することを意味している。また、体操競技の宙返りの指導においては「地面を見たいが見えない…」といったつまづきが生じる例は少なくない。非日常的かつ複雑な動作を特徴とする体操競技の技ではそもそも「どうやって見るのか」すなわち、どのような「コツ」(金子、2005)によって見るのかという「地面を見るための動き方(コツ)」の存在も見過ごしてはならない。
そこで、本研究ではスポーツにおける空間認知能力の中でも、体操競技の空中感覚に焦点を当て、それを発生運動学の立場からコツとカンとして捉えることで、体操競技選手はどのような身体操作によって空間認知を達成しているのか、その動感構造を明らかにすることを目的とする。発表では体操競技における技の修正事例を基にして、空中動作が改善された例について検討することで、空中での身体位置が捉えやすい動き方についてのコツやカン情報を明らかにしていく。
そこで、本研究ではスポーツにおける空間認知能力の中でも、体操競技の空中感覚に焦点を当て、それを発生運動学の立場からコツとカンとして捉えることで、体操競技選手はどのような身体操作によって空間認知を達成しているのか、その動感構造を明らかにすることを目的とする。発表では体操競技における技の修正事例を基にして、空中動作が改善された例について検討することで、空中での身体位置が捉えやすい動き方についてのコツやカン情報を明らかにしていく。