[09 方ーポー23] 大学野球投手における主観的努力度の異なる投球動作の特徴
野球の試合において、投手の力量は勝敗に大きく影響すると考えられており、野球は投手力が7割ともされている。そして、ボールをより速く、狙ったところに投球できる能力は重要であると言われている。一般に、投手は試合中の投球時に自身の感覚で出力を調節して投球を行っている。主観的努力度の変化によるボール速度や正確性に関する報告は見られるが、投球動作そのものを検討した研究は少ないようである。そこで本研究では、大学野球投手における主観的努力度の異なる投球動作の特徴を明らかにし、投球動作指導のための基礎的知見を得ることを目的とした。被験者は、首都大学野球連盟一部リーグに加盟する大学硬式野球部の投手6名(身長:1.71±0.04 m、体重:74.4±4.8 kg、右投げ)であった。被験者には、マウンドからホームベース後方の捕手に向かって、100%、80%、60%の主観的努力度でそれぞれ投球させた。これらの投球を2台のデジタルビデオカメラを用いて撮影し、三次元DLT法を用いて身体計測点25点およびボール1点の座標値を得た。得られた三次元座標値から、身体各部およびボールの速度とその変化パターン、関節角度などを求めた。なお、分析区間は、踏み込み脚が最も高く上がった時点からボールリリース時点までとした。その結果、いずれの主観的努力度による場合も、末端部位ほど最大速度は大きくなり、最大速度がリリースに近い時点で出現する、いわゆる運動連鎖的な速度変化パターンがみられた。また、主観的努力度が小さいほど、球速も小さくなり、身体各部の最大速度も小さかった。主観的努力度が大きいほど、踏み込み脚(左脚)の膝関節角度および体幹の前傾角度が大きくなる傾向がみられた。