[09 方ーポー48] 床運動における後方伸身宙返り2回ひねりの三次元分析
男子選手と女子選手の身体操作の比較
ひねり技に関する研究の大部分は男子選手を対象としたものであり、形態、筋力・パワー等に相違のある女子選手を対象とした研究はあまりみられない。ひねり技を指導するうえでは、選手の形態、筋力・パワー、動作的特徴などを考慮する必要があり、男女のひねり動作を比較することにより指導に役立つ有益なデータが得られるものと考えられる。そこで、本研究では、男子および女子体操選手のロンダート後転とび後方伸身宙返り2回ひねりにおける全身および身体各部の角運動量、角速度などに着目してひねり発生のための身体各部の動きを比較した。1回ひねり局面と2回ひねり局面の時間は、男子選手Aでは1回ひねり局面が短く、女子選手Bでは長い傾向がみられた。男子選手A(左ひねり)では、踏切局面にて左右の腕をひねり方向に動かし、左腕と右脚によって全身のひねりの角運動量を増加させていたが、女子選手Bと比較して踏切局面における両腕の角運動量の生成は小さかった。女子選手B(左ひねり)では、踏切局面終盤から空中局面にて全身のひねりの角運動量の多くを生じていた。離床前から両腕を大きく上げており、離床直後でも右腕はひねり方向とは反対の角運動量を持っていたが、これは左ひねりを抑制するものと考えられた。また女子選手Bでは、1回ひねり局面において左右の腕を胸の前に引き付けることで慣性モーメントを小さくして、全身の角速度を増していた。男子選手Aでは、身体各部の角運動量や全身の角速度がわずかに小さい傾向を示した。しかし、男子選手Aでは女子選手Bよりも滞空時間が長く、ひねり開始のタイミングが早かったために、角運動量などがわずかに小さくても2回ひねりを完了できたと考えられる。したがって、男女間の筋力・パワーの相違は、ひねり技の滞空時間に影響を及ぼすだけでなく、身体操作にも影響すると考えられる。