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[学校保健体育-B-04] 保健体育科の教員養成課程におけるダンス授業の傾向と内容の検討
現職教員が受講してきた教員養成課程の内容に注目して
2008年より中学校の保健体育でダンスが必修化されたが、授業を担当する教員の中には、自身の経験不足や自身が描く理想の授業構成と自身の能力との乖離など、授業実施に対する不安を抱えた教員もいるという(山口ら、2017)。しかし、教員養成課程においてそのような不安や指導上の困難を少しでも減少できるダンス授業が行われているのか、教員養成課程の傾向を探る研究はみられない。そこで本研究ではダンス授業の現状を把握することを目的に、郵送法により東京都内の公立中学校(n=609)に勤務する体育科教員を対象とした質問紙調査を行い、全163名から回答を得た。自由記述はKHCoderでテキストマイニングを行い分析し、その結果を考察した。教員養成課程の内容で役立っていることがあるかという質問に対しては、ダンス必修化前の2007年以前に免許取得した教員(A群)は「踊ることの楽しさ」や「表現」など、ダンスそのものの価値や特性に言及している傾向がみられた。一方ダンス必修化後の2008年以降に免許取得した教員(B群)は、「授業」や「指導」といった実践的な部分に言及している傾向であった。教員養成課程の内容で不足していたことがあるかという質問には、A群は現代的なリズムのダンスやその指導に関して、B群はここでも授業や指導方法について言及している傾向がみられた。さらに授業内容に関する質問で、教員養成課程において模擬授業を行ったという回答は15%に留まっており、実践的な指導方法に焦点を当てた授業について改善の余地が残されていると推察できる。また、ダンスのジャンルに関する質問では、調査対象者は教員養成課程において「創作ダンス」を最も多く受講していた一方、現在の中学校の授業では「現代的なリズムのダンス」が最も多く採択されている結果となった。以上より、現場の実情を踏まえた教員養成課程の授業内容を検討する必要性が示唆された。