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[競技スポーツ-B-04] 女子車いすバスケットボール選手が知覚する指導者の社会的勢力
指導者への満足を規定する諸要因の検討
指導者の潜在的な社会的勢力は、知覚する選手の状態によりその種類や程度が異なる(伊藤ら、1993)。本研究は、障害者アスリートと指導者の関係に着目し、女子車いすバスケットボール選手が知覚する指導者の社会的勢力の観点から指導者への満足を規定する要因を明らかにすることを目的とした。調査は2020年1月に開催された日本女子車いすバスケットボール選手権大会エントリー選手78名(健常選手除く)を対象に質問紙にて実施し、56名の回答を得た(回収率71.2%)。調査項目は、指導者の社会的勢力(野本ら、2015)、障害者スポーツ指導者に求められる介助力(金山、2016)から、①「専門的指導力」、②「コミュニケーション力」、③「日常生活ケア力」の3つの概念で構成した。さらに、指導者の社会的勢力の10次元(伊藤、1994)を①「専門的指導力」に「専門勢力」「利益勢力」「準拠勢力」、②「コミュニケーション力」に「親近・受容勢力」「指導意欲勢力」「高め合い・称賛する姿勢」、③「日常生活ケア力」に福島(2004)の「健康維持力」「問題対処力」「介護力」「境調整力」をあてはめた(5点リカート尺度)。次元毎に主成分分析を適応し、第1主成分得点を用いて、選手及び指導者の属性別に比較検討を行った。次に、現在の指導者への満足を従属変数として重回帰分析を適応した。結果、①「専門的指導力」は選手の受傷以前のスポーツ経験、年齢、指導者の性別、②「コミュニケーション力」は受傷経過年数、③「日常生活ケア力」は、車いすバスケットの継続年数、指導者の性別によりそれぞれ違いを認めた。特に障害のある指導者の社会的勢力は、障害の無い指導者よりも選手に強く認識されていた。しかし、指導者への満足には、指導者の障害の有無に関係なく「専門勢力」「利益勢力」のみが影響していた。選手は指導者の価値を競技に関する専門性により形成していた。