日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

講演情報

テーマ別研究発表

競技スポーツ研究部会 » 【課題C】ハイパフォーマンススポーツ (トップレベルの競技スポーツ)におけるトレーニングをいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題C】口頭発表②

2021年9月8日(水) 13:45 〜 14:55 会場16 (Zoom)

座長:大沼 勇人(関西福祉大学)

13:45 〜 14:05

[競技スポーツ-C-06] 北海道マラソンの完走タイムやペースに対する30kmペース走の有効性の検討

*井上 恒志郎1、山口 明彦1、秋月 茜1,2 (1. 北海道医療大学リハビリテーション科学部、2. 拓殖大学北海道短期大学)

マラソン練習として有名なペース走には、持久力向上やペース感覚養成の効果があり、記録向上に繋がると言われているが、その効果を示すデータや夏マラソンを対象とした研究は乏しい。我々は先行研究で、夏の北海道マラソンの完走率向上に30kmペース走が有効であることを報告している。本研究では、30kmペース走が持久力向上やペース感覚養成をもたらし、北海道マラソンの記録向上にも有効かどうか検証した。2017年北海道マラソン出場男子選手に、大会前に無作為街頭アンケート調査を実施し、年齢、身長体重、走歴、シーズンベスト(SB)、大会前3ヶ月の月間走行距離・最大走行距離と30kmペース走実施の有無を調査した。完走(ネット)タイムと10km毎のペースは大会後にゼッケン番号から照合した。走力を考慮して分析するために、完走者で30kmペース走実施の有無とSBを記入していた299名を対象とした。全体では、ペース走未実施者に比べ、実施者は20km以降のペース低下が有意に小さく、完走タイムも有意に速かった。SB順に4群に分けて解析した結果、SB最上位群(2:29〜3:32)では、ペース走未実施者に比べ、実施者はレース全体のペースと完走タイムが有意に速く、SBからの記録低下も有意に小さかった。一方、SB最下位群(4:28〜6:00)では、完走タイムに違いはないが、ペース走未実施者に比べ、実施者は20km以降のペース低下が有意に小さかった。なお、両群ともペース走実施者と未実施者のSBと月間走行距離に違いはなく、他の群ではこれらの変化はみられなかった。また30km距離走の有無による解析でも、両群で見られた変化は認められなかった。以上から、夏マラソン前の30kmペース走は走力の高い選手では持久力向上に伴う記録の改善が期待でき、走力の低い選手では記録改善は見込めないもののペース感覚養成の効果が期待できると考えられる。