日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題C】ハイパフォーマンススポーツ (トップレベルの競技スポーツ)におけるトレーニングをいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題C】口頭発表③

2021年9月8日(水) 13:45 〜 15:05 会場17 (Zoom)

座長:豊嶋 陵司(愛知淑徳大学)

14:05 〜 14:25

[競技スポーツ-C-11] 平均台のわざ幅に関する一考察

*新竹 優子1、中村 剛1 (1. 筑波大学)

 体操競技において緊張を強いられる試合場面で高度なパフォーマンスを発揮するためには、演技の構成要素である一つひとつの技をただ習得すればよいわけではない。それらは「いつでもどんな情況でも成功させられる」という確信の持てる状態にまで洗練化させておく必要がある。この洗練化に向けたトレーニングでは、とりわけ動きかたに成功するときの幅を拡げること、つまり「わざ幅」(金子、2002、p.427)を拡大させることが中心的課題となる。
 本研究で取り上げる平均台は高さ125cm、幅10cmであり、その演技は、運動する支持面の制限と高さという条件のもとで行われるため、常に落下の危険性がつきまとう。そのため平均台のトレーニングにおいてこの「わざ幅」をいかに拡大させるかは、極めて困難かつ重要な課題となる。しかしながら、平均台のトレーニングに関する先行研究は、基礎図式を主題化したものが大半で、わざ幅を備えた洗練化図式を取り上げたものは皆無であり、その解明は急務と考えられる。
 そこで本研究では、発表者自身が広いわざ幅を獲得し、国際大会においても安定した演技を実施することのできた平均台における「開脚後転とび―開脚伸身後方宙返り」という連続技を例証として取り上げ、発生論的運動学の立場から反省分析を施し、この連続技の動感地平構造の解明が目指された。その結果、わざ幅を内包した洗練化形態が、運動遂行のわずかなズレを察知し即座に修正するためのチェックポイントといえる意味核と高度な時間化能力によって支えられていることが明らかとなった。本研究で得られた成果は、平均台の上級者トレーニングにおいてどのような動感形態を志向対象にすべきかといった目標像の設定や習熟段階を確認するための手引きになると考えられる。