日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題C】ハイパフォーマンススポーツ (トップレベルの競技スポーツ)におけるトレーニングをいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題C】口頭発表④

2021年9月8日(水) 13:45 〜 15:00 会場18 (Zoom)

座長:梅崎 さゆり(天理大学)

14:30 〜 14:45

[競技スポーツ-C-17] バスケットボールにおけるピックプレイの実践知に関する事例研究

卓越した1名のユーザーの語りを手がかりに

*松本 沙羅1、會田 宏2 (1. 筑波大学大学院コーチング学学位プログラム、2. 筑波大学)

 バスケットボール競技において多用されているグループ戦術にピックプレイがある。これは、味方のオフェンス(スクリナー)が、ボールマン(ユーザー)のディフェンダーの進路を遮断し、2対1の数的有利を創るプレーであり、世界最高峰NBAでは攻撃の75%を占める(Kruger, 2003)。ピックプレイにおいてアドバンテージを創るための鍵は、ボールを保持するユーザーが握っている(佐々木ほか、2015)。
 スポーツを指導する場面では「どのようにするとできるのか」という主観的な情報を選手に伝えることが効果的である(阿江、1999)。しかし、ピックプレイに関する研究の多くは、記述的ゲームパフォーマンス分析を用いて客観的・数量的にその構造の枠組みを検討したものであり、選手自身の内省を手がかりにして実践で働く戦術的思考や知の構造を研究したエビデンスは見当たらない。
 そこで、本研究では、卓越したピックプレイユーザー1名を対象にインタビュー調査を行い、その戦術的思考や実践知を解明し、指導現場に役立つ知見を提供することを目的とした。
 調査内容は、ピックプレイにおける動きのコツ、対峙する相手との駆け引きのポイント、味方および相手プレイヤーに向けている注意、上達の過程において転機となった出来事等であった。インタビュー調査時のすべての発言内容を逐語録として文章に起こし、語りの内容としてまとめ、それを質的に解釈した。その結果、ユーザーは、ピックの準備局面において対峙する相手との駆け引きを始めていること、主要局面では「今対峙する相手や状況」ではなく、「次に対峙する相手や状況」に注意を向けていること、特にドリブルの技術力が戦術的思考の広がりに影響を与えていることが明らかになった。