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[競技スポーツ-C-19] 対人運動技能としてのテニスの返球角度系列に潜む規則性
本研究では、対人運動技能として一つ前の相手の打球に影響を受けながらも、相手打球をどのように返球するかという返球角度の時系列に着目し、そこに潜む規則性を明らかにすることを目的とした。つまり、ラリーの中で相手の状態を探るや、崩すという配球の組み立てを意図的に行っているとすれば、そこには何らかの規則性が潜むはずである。本研究では、この返球角度の時系列に潜む規則性を明らかにするために、ソフトテニスの熟練者として国際大会と、中級者として大学生の地区リーグ戦におけるシングルスゲームを対象に解析した。各ポイント内で9本以上のラリーが続いたポイントを対象に、一つ前の相手の打球コースに対する返球コースの角度を算出し、相手の打球方向より右方向への返球は負、左方向を正と定義した。そして、同じ選手の返球角度の時系列を、横軸にn本目の返球角度を、縦軸にn+1本目の返球角度をとるリターンマップとして表現し、4回から8回の返球角度の時系列に関して回帰直線のあてはめを行った。その結果、熟練者、中級者とも6割を超えるポイントにおいて、有意なあてはめ、すなわちアトラクタならびにリペラが観察された。また、4回の返球角度系列において、熟練者では7割、中級者では5割に4種類のアトラクタ・リペラが観察され、これはサロゲータデータと比較しても圧倒的に多い出現率であった。特に、熟練者では8回の返球角度に規則性が見られたケースも31ケース見られた。多くは回転型リペラで、左右へ交互に返球しながら、徐々に返球角度を大きくしていくというものであった。これは、相手を左右に動かすことに相当し、理にかなった戦術と言え、これらの規則性が見られた後にエース、あるいは相手のミスというケースも観察された。つまり、相手の打球の影響を受けながらも、自らの返球角度を統制し、相手を探る、崩すという対人運動技能を有すると考えられた。