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[競技スポーツ-C-22] サッカーにおけるシュート時の注視行動にみられる時空間的特徴
スポーツのプレー場面において選手が用いる知覚情報や状況判断に関する研究では、提示された映像刺激に対する注視行動が測定されることが多い。しかし、実空間での標的へ向けての運動や移動を伴う状況下での検討は十分に行われていない。そこで本研究では、サッカーで実際に移動しながらシュートを行う条件を設定し、選手のポジションやシュート時の時間的制限の有無による注視パターンの差異を検討することを目的とした。大学生サッカー選手23名を参加者とし、参加者は眼球運動測定装置を装着した状態でゴール正面約20mの位置からシュートを行った。条件は(1)静止したボールをシュート、(2)パスをワントラップしてシュート、(3)パスを1タッチ目でシュート、の3つを設定し、各参加者は各条件6試行(合計18試行)行った。条件(1)ではゴールキーパーが中央から動かず、参加者のシュートする方向は予め左右いずれかに決められた。条件(2)と(3)ではゴールキーパーがパスの直後に左右いずれかに動く場合があり、その際参加者は空いたスペースを判断してシュートすることが求められた。その結果、いずれの条件でもインパクトの瞬間はボールを注視していたが、ボールへの注視時間割合は条件(2)が条件(1)や条件(3)に比べて大きかった。これは、条件(2)ではボールが静止している場合に比べてトラップによるボール操作に注意が向けられたことや、条件(3)では時間的な制限によりボールへの注視が難しかったことを示唆している。また、条件(2)でのボールへの注視時間割合は、ポジションがフォワードの参加者や高いレベルの参加者において大きかった。以上のことから、動的な環境下で判断が求められる場面で、シュート技能に優れた選手はゴール状況や周辺視によって把握しながら、ボールをより長い時間注視していることが示唆された。