日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】テーマ別シンポジウム/スポーツの理想とその暴力性:多様なスポーツ文化の醸成へ向けたスポーツ研究の自己反省

2021年9月8日(水) 10:45 〜 12:45 会場2 (Zoom)

コーディネーター:髙尾 尚平(⽇本体育⼤学)、山口 理恵子(城西大学)

10:45 〜 11:25

[スポーツ文化-SB-1] スポーツ文化論の展開と学問論

*樋口 聡1 (1. なし(広島大学名誉教授))

<演者略歴>
筑波大学体育専門学群卒業(一期生)。筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了。教育学博士。広島大学名誉教授。著書に『スポーツの美学』『遊戯する身体』『身体教育の思想』『教育の思想と原理』『教育における身体知研究序説』Somaesthetics and the Philosophy of Culture: Projects in Japan (Routledge)など多数。
スポーツ文化論の展開を学問論的に批判するための問題のいくつかを、私のこれまでの研究から指摘してみよう。そこに見られる「批判」という視点は、もちろん「非難」とは異なり、ものごとを別の角度から見直すことを意味するものである。それは、当たり前になっている言説に立ち止まり、それを疑い、違った言説を編み直すことを促す。その批判精神が、私の「スポーツ科学論序説」ほかとして形になった。西洋学の典型的存在である美術史学の内部に、或る対象を芸術と認定しそれ以外は非芸術として抹殺する学問的暴力の行使を見出すことができる。この学問の暴力性は不可避であり、スポーツ科学や体育学においてもありえ、その背後に働く力学を測定する一種の「政治学」が要請される。史料に基づいた客観的歴史などという観念を超えた、私たちの生き方に迫ろうとする歴史研究の姿が、スポーツ科学論序説からは導かれる。それは「歴史」という領域を越えていく。また、学校教育の授業研究のあり方にも一石を投じることになる。科学批判としての「スポーツ科学の限界」の指摘が、スポーツ科学(体育学)の外部の研究者によってなされていることに目を向けなければならない。