日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題B】スポーツの産業化は生涯スポーツ・人・地域社会といかに関連するか

生涯スポーツ研究部会【課題B】口頭発表①

2021年9月8日(水) 09:45 〜 10:30 会場21 (Zoom)

座長:川邊 保孝(東海大学)

09:45 〜 10:00

[生涯スポーツ-B-01] 女性チャリティランナーと寄付先団体のコミュニケーションに関する研究

*醍醐 笑部1 (1. 筑波大学体育系)

本研究はマラソンイベントへチャリティランナーとして参加した経験を持つ女性チャリティランナーを対象に、①寄付先団体とのコミュニケーションと寄付への態度を明らかにすること、および②寄付への態度と継続した支援との関係を明らかにすることを目的とした。調査項目として、AIDMAモデルの次世代版として提唱された「SIPSモデル」(佐藤、 2008)をチャリティランナーの寄付への態度および行動プロセスを把握する枠組みとして用いた。これはソーシャル・メディアの浸透によって「S(共感)→I(興味・確認)→P(参加)→S(拡散・共有)」と、共感を軸にした企業と生活者の長期的な関係構築が始まるという点において特徴的である。
まずはじめに、SIPSに影響を与えるコミュニケーションを明らかにするため、寄付先団体の担当者へアンケートを行いチャリティランナーに対して行ったことのある具体的な取り組みを抽出した。その結果、エントリーから大会当日まで、大会当日、大会後と3つのタイムフェーズに分類することができる実施内容が明らかとなった。SIPSの項目得点との間の相関関係について分析を行ったところ、大会前のコミュニケーションよりも大会当日および大会後のコミュニケーションがSIPSの各項目と有意に相関が認められる傾向にあった。
次にSIPSモデルを基に「共感」から順に「興味」「確認」「大会後の参加状況」「拡散・共有」へと影響の方向を示す仮説モデルの検証を行った。修正指標を参考に修正し再分析を行った結果、許容可能な値を示したモデルでは「共感」と「興味」は共変関係にあり、「興味」から「確認」へのパス係数が.91と最も影響が強かった。「確認」から「拡散・共有」(標準回帰係数:.80)、「確認」から「大会後の参加状況」(.25)、「大会後の参加状況」から「拡散・共有」(.07)に直接的な影響が認められた。