日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題B】スポーツの産業化は生涯スポーツ・人・地域社会といかに関連するか

生涯スポーツ研究部会【課題B】口頭発表①

2021年9月8日(水) 09:45 〜 10:30 会場21 (Zoom)

座長:川邊 保孝(東海大学)

10:15 〜 10:30

[生涯スポーツ-B-03] eスポーツのオフラインプレーが高める気分とオキシトシン分泌

*松井 崇1、門間 貴史1、下山 寛之1、兵頭 和樹2、島 孟留3、石原 暢4、藤井 直人1、高木 英樹1 (1. 筑波大学、2. 明治安田厚生事業団体力医学研究所、3. 群馬大学、4. 神戸大学)

 オキシトシン(OT)は、親子の愛着などの社会関係形成や協力・信頼などの向社会行動を担う「絆ホルモン」である。最近、OT分泌が柔術で高まることから、武道やスポーツの教育・福祉効果を担う分子機構として注目される。私どもは、ビデオゲームの対戦によるeスポーツのオンラインプレーがリアルスポーツに似た心拍数の上昇、気分の改善、勝敗に応じた内分泌反応を引き出すものの、OT分泌を高めないことを確認した(日本神経科学会、2021)。本研究では、eスポーツのオフラインプレーがOT分泌を高めるかどうかを生理・心理指標と併せて検討した。
 16人の若齢成人(男性15名、女性1名、21.6 ± 2.6歳)がウイニングイレブン(コナミ社)のオフライン大会に自由応募で参加し、勝敗を決するまで15〜30分間プレーした。心拍数を常に測定しながら、プレー前、終了直後、30分後に唾液を採取し、気分をProfile of Mood States(POMS2)で評価した。唾液のα—アミラーゼ活性(AMS)、コルチゾル(CT)、テストステロン(T)、OTをELISA法により定量した。
 プレー中の心拍数は毎分約100拍まで上昇し、プレー終了10分後に安静レベルに回復した。気分は、緊張—不安が大会当日に上昇したが、試合が終わると低下した。大会翌日の活気—活力と友好は前々日よりも高かった。ストレス指標である唾液AMSとCTは、プレー直後に勝敗に関係なく増加し、30分後にプレー前のレベルに戻った。認知や有能感に関わるTは勝者においてプレー直後に高値を示した。OTはプレー直後に勝敗に関係なく増加した。
 本研究により、15〜30分程度のeスポーツのオフラインプレーが、勝敗によらず気分の改善とともにOT分泌を促進することが初めて明らかになった。オフラインeスポーツは、OTを通じて社会性を育む生涯スポーツとして有用である可能性がある。