日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題B】認知機能の維持・改善に運動・スポーツはいかに貢献するか

健康福祉研究部会【課題B】口頭発表①

2021年9月8日(水) 09:00 〜 10:25 会場23 (Zoom)

座長:細谷 洋子(東洋大学)

09:30 〜 09:45

[健康福祉-B-03] 実行機能と脳血流動態に対する複雑な運動の効果

バドミントンとランニングの比較

*高橋 信二1 (1. 東北学院大学)

目的:継続的な運動ばかりではなく、一過性であっても運動は実行機能に好ましい影響を与えることが確認されている。しかしながら、一過性運動のタイプについてはまだ十分検討されていない。そこで本研究は、複雑な運動としてバドミントンを選択し、バドミントンとランニングの実行機能の1つである抑制機能に対する効果を比較した。また、抑制機能テスト中の前頭前野の脳血流量を機能的近赤外線分光法により比較し、運動タイプと脳血流動態の関係も検討した。

方法:被験者は健康な右利きの16名の大学生(女性5名)であった。被験者はランニング、バドミントン、座位安静(コントロール)の介入を10分間それぞれ別日で行った。各介入の前後でストループ課題(中立課題と不一致課題)を行い、反応時間(RT)を測定した。各介入中の運動強度は携帯式間接熱量計により測定した。ストループ課題中の前頭前野の脳血流動態を近赤外線分光法した。各測定値は混合モデルの枠組みで2要因の分散分析により比較した。

結果:ランニングとバドミントンで強度の違いは認められなかった(p = 1.000)。ストループ課題では、中立課題のRTに運動の効果を示す交互作用に有意性は認められなかったが(p = 0.230)、不一致課題のRTに有意な交互作用が認められた(p = 0.009)。バドミントンがコントロールよりも有意にRTを短縮させていたが(p = 0.003)、ランニングとコントロール間にRTの違いは認められなかった(p = 0.460)。各介入前後の脳血流動態に有意な変化は認められなかった(p ≧ 0.056)。

まとめ:複雑な運動の1つであるバドミントンは単純なランニングよりも抑制機能を向上させるものの、前頭前野の活性に大きな違いは認められなかった。複雑な運動が実行機能を向上させる原因については今後さらなる検討が必要である。