日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】口頭発表①

2021年9月8日(水) 09:00 〜 10:15 会場7 (Zoom)

座長:周東 和好(上越教育大学)

09:00 〜 09:15

[スポーツ文化-B-01] ハンドボールの活動的地域における「地域性」

競技者のライフストーリーをもとに

*三輪 将太郎1、藤本 元2、會田 宏2 (1. 筑波大学大学院体育学学位プログラム、2. 筑波大学体育系)

特定のスポーツが盛んな地域には、そのスポーツが文化として根付いており、地域の環境がそのスポーツおよび競技者に影響を与えているのではないか。これまで、地域とスポーツの関係性を研究蓄積や既存の政策などから考察する研究は行われている(伊藤・松村、2009)が、そのスポーツに関わる主体としての競技者に焦点を当てた研究はほとんどされていない。そこで本研究では、ハンドボールにおいて高い活況度を持つ沖縄県と富山県を「活動的地域」と捉え、その地域出身の競技者に焦点を当て、彼らのライフストーリーをもとに、活動的地域の地域性が競技人生にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とする。
本研究では半構造化インタビューを行った。調査対象者は、沖縄県および富山県出身で、大学でもハンドボールを続けている学生4名とした。調査は研究倫理審査が承認された2020年4月30日から2020年12月31日の期間に行った。
本研究の調査から、以下のような内容が得られた。(1)活動的地域出身の競技者にとって、その活況度の高さは当たり前の環境であった。活況度を把握したのは、その地域を離れ、違う環境で競技をしたときだった。(2)活動的地域出身の競技者が自身の出身地に持つ価値観として、地域特有のプレー観や、地元に対する強いブランド意識があった。それら価値観も、その地域を離れ、違う環境で競技をすることで感じていくものだった。(3)調査対象者のうち2人は、高い活況度が原因の苦悩を伴った競技人生を経験していた。
調査内容から、活動的地域出身の競技者は、競技人生が構成される過程の中で、活動的地域に対する価値観を相対化する視点を得ていくと考えられる。しかし、その地域内にいるときは活況度の高さが日常だったことから、これら相対化する視点は競技者が自身の出身地域にいるときは潜在しており、その地域を離れたときに顕在化されると考えられる。