The 71st Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Subdiscipline)

専門領域別 » Cultural Anthropology

スポーツ人類学/口頭発表①

Thu. Sep 9, 2021 11:00 AM - 11:40 AM Room 13 (Zoom)

Chair: Tetsuya Sagawa (Kanazawa University)

11:00 AM - 11:20 AM

[12 人-口-01] フランス領インドシナにおける学校体育の導入経緯

1925年度前後の仏印植民地の行政報に着目して

*Taku YAMAGUCHI1 (1. University of Tsukuba)

 本研究では、「現地に基づく体育カリキュラム」を検討するための先行情報として不可欠な途上国における学校体育の発展に関する研究の不足を補うために、「フランス領インドシナにおける学校体育」に関する研究を行った。具体的には、仏印各地域における「植民地時代の経験」に基づいて、学校体育開発が進められた過程を、1925年前後の仏印行政法に基づいて調査・検討した。
 その結果、統一的な政策の失敗を鑑みて、地域的独自性を鑑みた政策に移行した政治経済政策や教育改革に呼応しながら、軍当局と教育当局が連携して、仏印各地の状況に合わせた体育が形成されていたと結論付けられた。
 学校体育の黎明期では、1917年の「公教育一般規定」に基づいて開始された体操教育は散発的で不均一な取り組みに終わり、移行期の1921年には、軍司令官が発令した「教練・士官準備一般規定」によって、仏印全土の学校体育の勢いが増していた。また、導入期の仏印統治政権は、まず初期段階での失敗経験を踏まえ、1924年に大学と軍の間の協定の締結、軍の指導者への特別手当の支給、体育指導のための地域センター(CRIP)の設立準備、特別委員会による生理学的調査の実施など、一連のアレテを発令し、本格的な学校体育の導入に向けた対策を講じていた。さらに、1925年の体育キャンペーンを通じて学校体育の本格的な導入が開始され、体育授業や年次スポーツ祭の運営、全過程制学校での体育施設の設置を進め、1926年にはジョインビル校の指導法の採用、体育マニュアルの配布、現役教師向けの体育指導コースや新任教師教育制度などが組織された。
 その後、各仏印の植民地経験に基づいて、スポーツ教育に特化した体育、施設の充実を目指した体育、健康や衛生に着目した体育、道徳的体育などの多様な学校体育が仏印各地で形成された可能性が浮かび上がった。