日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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アダプテッド・スポーツ科学/口頭発表①

2021年9月9日(木) 10:15 〜 11:20 会場14 (Zoom)

座長:曽根 裕二(大阪体育大学)、松原 豊(筑波大学)

10:15 〜 10:30

[13 ア-口-01] 集団における行動問題を包摂する教師の言葉がけの検討

ある体育活動場面におけるエスノグラフィーによる記述から

*黄金 理佐1、澤江 幸則2、齊藤 まゆみ2、松原 豊2 (1. 筑波大学大学院、2. 筑波大学)

 近年特別な教育的支援を必要とする子どもの数は増加傾向にある。また、通常学級に在籍するグレーゾーンと呼ばれる子どもへの支援の必要性も取り上げられ、通常学級におけるインクルーシブ体育の実践が求められている。しかし、インクルーシブ体育を阻害する一要因として、子どもの行動問題があり、教師はその対応に通常学級だからこその困難さや特性に応じた対応の難しさを感じていることが指摘されている。さらに、行動問題は問題を起こす子どものみの問題ではなく、教師や他の子どもを含む周囲の環境によって引き起こされたり抑制されたりすることも明らかになっている。
 そこで本研究では、通常学級におけるインクルーシブ体育の実践に向けた新たな視座を示すことを目的に、学級の中で反復して出現する行動問題を起こした子どもが活動に包摂される過程や、その際に働きかけられた教師の子どもに対する有効な言葉がけを明らかにする。そのために、NPO法人が実施している障害の有無等に関わらず、4歳から小学校6年生まで誰でも参加可能な体育教室を対象に、20XX年4月から7月にかけてエスノグラフィーの手法を用いた調査を実施した。そこで、行動問題が発生する前後の教師の言葉がけや行動問題を起こした子どもが集団に包摂される過程に焦点を当てたフィールドノーツを記述、累積するとともに、教師に対しインフォーマルインタビューを実施した。また、観察された各行動問題の機能を主にMAS(Durand,1,990)を用いて明らかにした。これらから、同じ行動でも集団の中で問題となる場合とそうでない場合があること、つまり教師の行動問題の捉え方や言葉がけがインクルーシブ体育の実践に影響を与えることが明らかとなった。さらに、教師は子どもの行動問題を機能のみで判断するのではなく、その場その時に有効な言葉がけが必要であることが示唆された。