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[01 史-口-06] ライプチヒ学派「トレーニング論」の変遷(1)
トレーニング論の対象を中心として
2017年に出版された「トレーニング学((トレーニング科学(Trainingswissenschaft)ートレーニング論(Trainingslehre))ハンドブック」では、その対象を、パフォーマンス能力(Leistungsfaehigkeit)、トレーニング、試合(Wettkampf)、診断(Diagnostik)としている。トレーニング学は、オリンピックなどでのパフォーマンス発揮に深く関わることから研究成果も競技性を有しており、情報交換に一定の制限が加えられている。こうした制限を前提としつつも、研究成果に関する情報交換の土台となるプラットフォームの共有が必要である。本研究は競技種目ごとのトレーニング情報や科学的研究成果を交換するための土台となる一般トレーニング学の研究対象とその術語の変遷を旧東独におけるトレーニング学の教科書と周辺資料を用いて跡づける。Schnabelは2007年に出版された「ライプチヒドイツ体育大学 1950-1990」で東独での「トレーニングの一般理論と方法学」の展開を概観している。そこで示されているように1957年出版されたHarre, Neugebauerの「一般トレーニング論・試合論入門(Einfuehrung in die allgemeine Trainings- und Wettkampflehre)」はトレーニング学のひとつの端緒ということができる。Harreは、序文のなかでスポーツ選手のパフォーマンス能力を最適化することをトレーニングの狙いとし、この最適化過程がトレーニング論(試合論を含む)の研究対象だとしている。この考え方はその後の東独におけるトレーニング学研究でも堅持された考え方である。パフォーマンス能力の最適化にむけたトレーニング論の構成、それに必要な術語の変遷を「トレーニング論」の改訂版の記述内容の比較をもとに提示する。