日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育社会学/口頭発表①

2021年9月9日(木) 09:00 〜 09:50 会場4 (Zoom)

座長:大勝 志津穂(愛知東邦大学)

09:00 〜 09:25

[02 社-口-01] 「運動部活動の効果研究」における性の二元化と多様性の不可視化に関する検討

*三上 純1 (1. 大阪大学大学院人間科学研究科)

これまで運動部活動の教育的意義が様々に指摘されてきたが、その活動内容のほとんどは男性の教育的手段として発祥発展してきた近代スポーツであり、運動部活動への参加によって生徒が受ける影響は性のあり方によって異なることが明らかにされている。しかし、これまで運動部活動研究ではジェンダーやセクシュアリティは主要なテーマとされてこなかった。本研究では、今宿ほか(2019)の方法に則して収集した「運動部活動の効果研究」をジェンダーやセクシュアリティの視点からレビューし、当該研究の中で性がいかに扱われてきたのかを明らかにすることを目的とする。

本研究では、男性のみを分析対象とした論文を「女性の不可視化」、女性を分析対象に含む論文を「女性の可視化」とした。「女性の不可視化」では、男性のみを対象とする理由はほとんど示されず、示されている場合でも性別を統制するために女性を分析から除外するなどの理由であった。「女性の可視化」において、女性のみを対象とする場合はその理由が明確に述べられており、男性の場合との不均衡が確認された。男女とも分析に含む場合は、分析上確認された性差が放置されたり、その差が性別特性として強調される記述が見られた。上記の作業とは別に、性の多様性がいかに不可視化されているかについて、「調査設計による不可視化」「『欠損値』としての除外」「マイノリティゆえの不可視化」という観点により分析した。

「運動部活動の効果研究」では、分析対象の設定において男女が同等に扱われていない傾向が見られ、ジェンダー視点を踏まえた分析や考察はほとんど行われていなかった。また、性の多様性は調査設計上、あるいは分析方法により不可視化されていた。今後、スポーツを主たる内容とする運動部活動の教育的意義を多様な生徒の存在を前提として検討していくためには、ジェンダーの視点や性の多様性を視野に入れた研究が不可欠である。