日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育社会学/口頭発表①

2021年9月9日(木) 09:00 〜 09:50 会場4 (Zoom)

座長:大勝 志津穂(愛知東邦大学)

09:25 〜 09:50

[02 社-口-02] 保健体育科教員養成における女性の健康課題への視点

全国国公立大学のシラバスを対象に

*前田 博子1、三浦 柚記2 (1. 鹿屋体育大学、2. 株式会社 ZEN PLACE)

女性アスリートの抱える「運動性無月経」は、近年、大きく取り上げられている。この背景には、運動と健康的な女性の身体に関わる知識不足が存在すると考えられる。また、若い女性の「痩せ」も第二次健康日本21で課題に挙げられている。これらに対する教育は、「運動に親しむとともに健康の保持増進」を目指す保健体育科の範疇と言えるだろう。それでは、教員は「女性と健康」に関して、十分に学んできているのだろうか。そこで本研究では、保健体育科教員養成のカリキュラムに役目することとした。研究目的は、保健体育科教員養成において、「女性の身体と健康」に関する学びがどの程度用意されているのかを明らかにすることである。
研究方法は、1)全国の国公立大学の保健体育科教員養成課程における科目のシラバスから、「女性」「健康」「保健」で検索を行い、2)いずれかが検出された科目について、「痩せ」「ダイエット」「貧血」「月経」「性周期」「二次性徴」等のキーワードで「女性と健康」に関わる内容と確認していった。
対象となったのは57大学であり、そのうち50大学ではこれらの科目が1つ以上開講されており、全体で253科目が検出された。これらを大学別の科目数、科目の中の開講時間数、「一般」と「専門」での扱いなどから分析を行った。結果として、多くの大学が「女性の健康」を取り上げていたが、1割の大学ではまったく扱われていなかった。また、専門科目で取り上げられる割合は73.2%と高かったが、6.0%の大学では一般科目のみに留まっていた。さらに、開設科目数は平均して4.7科目であるが、最小値が1、最大値が12、最頻値が2と大学間の差が大きいことが分かった。したがって、保健体育科教員を養成する過程において、「女性の健康」に関して十分な学びを持たないまま教員免許状を取得する者の存在が明らかとなった。