日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

講演情報

専門領域別研究発表

専門領域別 » 体育心理学

体育心理学/口頭発表①

2021年9月9日(木) 13:00 〜 14:00 会場5 (Zoom)

座長:星野 聡子(奈良女子大学)

13:00 〜 13:20

[03 心-口-01] ジョイント・アクションにおける個人間の非対称な力の強さが力の誤差補正に与える影響

*升本 絢也1 (1. 広島文化学園大学)

先行研究では2人の参加者が同時に力発揮し、その総和を2つの目標値に対して周期的に一致させる課題を行い、2人の力が負の相関になり、両者の一方の力の誤差を他方が補正していることを見出した(Masumoto & Inui, Journal of Neurophysiology, 2013; 2015)。さらに、本研究は先行研究と同様の課題を用いて、2人の非対称な力レベルが個人間の力発揮の関係と課題パフォーマンスに与える影響を検討した。実験には男子大学生が2人1組の10組参加した。課題は2人の参加者が同時に力検出器(ロードセル)に対して力発揮し、その総和を分離的に目標値に一致させた。実験条件は2人の参加者の力レベルを操作しない1:1条件と、参加者の一方の力発揮を0.75倍にする1:0.75条件、参加者の一方の力発揮を0.5倍にする1:0.5条件の3つを設定した。3つの条件はそれぞれ30試行×3回の練習を行い、その後30試行のテスト試行を行った。1試行では、参加者は高いトーンの音刺激を提示された時に力発揮を開始し、1秒後に低いトーンの音刺激が提示された時に力発揮を終了した。その結果、全ての条件で2人の力発揮は負の相関関係を示し、2人の参加者は個人間の力の誤差補正を行っていた。さらに、1:0.5課題は1:1課題よりも負の相関関係が低く、2人の力の非対称の度合いの増加にともなって、個人間の力の誤差補正が低下した。一方、力の絶対誤差は1:0.5課題の方が1:1課題よりも高かった。したがって、2人の力発揮の不均衡の度合いが大きくなると、個人間の力の誤差補正が弱くなり、パフォーマンスも低くなった。両者の非対称な力発揮は個人間の運動プログラムの差異を大きくさせるため、参加者が他者の運動プログラムを予測しにくくなり、力の誤差補正の低下をもたらしたと考えられる。