1:30 PM - 1:43 PM
[05 バ-口-04] 杖歩行における杖への荷重の大きさの違いが上肢関節のキネティクスに及ぼす影響
歩行立脚期に必要な下肢関節トルクを補助する手段として杖が一般的に用いられるが、杖の使用が上肢関節における疼痛などの二次的障害を誘発することは少なくない。これは、杖の使用が上肢関節トルクの要求を高め、上肢関節への負荷を増加させる事が要因の一つとして推察される。しかし、これまで杖を用いた歩行中の上肢関節のキネティクスを分析した報告はない。そこで、本研究の目的は、杖の使用が歩行中の上肢関節キネティクスに与える運動力学的影響を明らかとする事とした。
健常成人10名が行った通常歩行(杖なし条件)及び荷重の異なる2条件の杖を用いた歩行を対象に、身体各標点に貼付した反射マーカーの位置座標及び地面反力を取得した。股関節疾患患者における杖への荷重の最大値は、体重の20%とされている為、本研究では、杖に生じる地面反力の最大値を各被験者の体重に対して10%(低荷重条件)及び20%(高荷重条件)に設定した。逆動力学演算によって上肢関節の屈曲伸展および掌背屈軸周りの関節トルクの最大値及び立脚期における関節仕事量を算出し、歩行条件間で比較した。なお、関節仕事量は、関節パワーが正の積分値を正仕事量、負の積分値を負仕事量、それぞれの絶対値を総仕事量とした。
低荷重条件及び高荷重条件における上肢三関節の伸展、掌屈トルクの最大値、正仕事量及び負仕事量は杖なし条件と比較して高値を示した。また、上肢三関節の正仕事量は、低荷重条件で肩:1.83 J、肘:1.0 J、手:0.071 J。高荷重条件で肩:2.12J、肘:3.07 J、手:0.076 Jであり、特に肘関節の正仕事量が高荷重条件で高値となった。
以上の結果から、杖を用いた歩行では、歩行に必要な下肢関節トルクを上肢三関節の運動で補助しており、杖への荷重の増加が、歩行における上肢関節の力学的出力の要求を高める事が示唆された。
健常成人10名が行った通常歩行(杖なし条件)及び荷重の異なる2条件の杖を用いた歩行を対象に、身体各標点に貼付した反射マーカーの位置座標及び地面反力を取得した。股関節疾患患者における杖への荷重の最大値は、体重の20%とされている為、本研究では、杖に生じる地面反力の最大値を各被験者の体重に対して10%(低荷重条件)及び20%(高荷重条件)に設定した。逆動力学演算によって上肢関節の屈曲伸展および掌背屈軸周りの関節トルクの最大値及び立脚期における関節仕事量を算出し、歩行条件間で比較した。なお、関節仕事量は、関節パワーが正の積分値を正仕事量、負の積分値を負仕事量、それぞれの絶対値を総仕事量とした。
低荷重条件及び高荷重条件における上肢三関節の伸展、掌屈トルクの最大値、正仕事量及び負仕事量は杖なし条件と比較して高値を示した。また、上肢三関節の正仕事量は、低荷重条件で肩:1.83 J、肘:1.0 J、手:0.071 J。高荷重条件で肩:2.12J、肘:3.07 J、手:0.076 Jであり、特に肘関節の正仕事量が高荷重条件で高値となった。
以上の結果から、杖を用いた歩行では、歩行に必要な下肢関節トルクを上肢三関節の運動で補助しており、杖への荷重の増加が、歩行における上肢関節の力学的出力の要求を高める事が示唆された。