日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題C】 人生100年時代に向けていかに人々のスポーツ権を保障するか

生涯スポーツ研究部会【課題C】口頭発表②

2022年9月1日(木) 15:20 〜 16:39 第7会場 (2号館1階12教室)

座長:水上 博司(日本大学)

16:08 〜 16:23

[生涯スポーツ-C-09] スポーツ・ボランティア研究における〈支援〉の再考(ア,社)

*植田 俊1、山崎 貴史2 (1. 東海大学、2. 北海道大学)

本研究の目的は、「支えるスポーツ」として意義づけられてきたスポーツ・ボランティアに関する既存研究において、〈支援〉がどのように議論されてきたかを再考するとともに、新たな研究の課題・視座を提起することである。 本研究では、スポーツボランティア活動の萌芽と目される1985年に開催された「ユニバーシアード神戸大会」以降に発表された文献を対象とし、以下の4つの観点から分析を行った。1)ボランティアをどのような要素で構成される概念と捉えて定義し研究の前提においてきたか(定義)、2)ボランティアの実践的場面における何(誰)に焦点を当てているか(対象)、3)対象をどのような方法で調査したか(方法)、その結果、4)ボランティアのどのような側面を解明課題としたか(問い)。 分析の結果、既存研究は参加誘因論と効果論の二つに大別して捉えることができた。この二つの議論の共通点は、スポーツ・ボランティアの意義を「する側」が活動を通じて得る「利得」にあると捉えている点であり、その前提として、スポーツにおけるボランティア活動を1)する側が担う「役割」と認識し、2)受ける側とする側の関係は常に良好であり、する側が担う役割を受ける側は無条件に受容すると考えていた。そのため、「支えるスポーツ」の研究でありながら、多くの既存研究は支援を受ける側を考察の対象から外し、ボランティア活動における「する―受ける側」関係や活動における支援の実態を描いてこなかったことが明らかとなった。そこで報告者らは、スポーツ以外のボランティア研究にも射程を広げて検討を行い、今後のスポーツ・ボランティア研究が解明するべき課題として、1)ボランティアを「する―受ける」関係として捉えること、2)ボランティアの現場における支援活動や関係の内実を描くこと、そして3)「する―受ける」関係にもとづく支援活動を成り立たせる論理を探ることの3点を提起した。