日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

講演情報

テーマ別研究発表

競技スポーツ研究部会 » 【課題C】 ハイパフォーマンススポーツ(トップレベルの競技スポーツ)におけるトレーニングをいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題C】口頭発表①

2022年9月1日(木) 14:00 〜 15:03 第3会場 (3号館4階402教室)

座長:中村 泰介(大阪大谷大学)

14:32 〜 14:47

[競技スポーツ-C-03] WEリーグとUEFA女子チャンピオンズリーグにおける速攻プレー特性の比較(測)

*安藤 梢1、松岡 弘樹2、西嶋 尚彦1 (1. 筑波大学 体育系、2. 筑波大学 スポーツイノベーション開発研究センター)

【目的】女子サッカーWEリーグ(WEL)では攻撃プレーの高速化を推進している。サッカーの体力・技術・戦術トレーニングを計画的に推進するためには、サッカーゲームにおける速攻プレーの特性を測定することが必要である。本研究の目的はWEリーグの速攻プレーの特性を測定し、上位のUEFA女子チャンピオンズリーグ(UEFAWCL)との差異を明らかにすることであった。
【方法】ワイスカウトのカウンターアタックに分類される攻撃プレー映像を収集した。標本は、第18節までのWEL2021-22における速攻32プレーであった。比較基準の標本は、UEFAWCL 2021-22、準々決勝と準決勝の1st legと2nd legにおける速攻30プレーであった。Dartfishを使用してボール移動から速攻プレー特性項目を測定した。ボール奪取から終了までの速攻プレー全体、相手守備ライン(DFL)を通過したスルーパス、ドリブルの距離、時間、速度、縦移動速度を測定した。ハーフライン(HL)を基準として、5m、10m、15m、20m、30m、ペナルティエリア(PA)、40mの区間縦速度を測定した。分散分析を適用して、WELとUEFAWCLの速攻プレー特性を比較した。有意水準はP<0.05とした。
【結果】WELの速攻プレー速度は4.73±0.74m/s であり、UEFAWCLの5.79±0.99m/s との間に1.0m/s の有意差が認められた。WELのドリブル速度は4.71±0.96m/s であり、UEFAWCLの5.83±0.78m/s との間に1.0m/s の有意差が認められた。WELのドリブル距離は25.05±11.08mであり、UEFAWCLの37.60±11.70m との間に12mの有意差が認められた。スルーパス速度には有意差が認められなかった。また、自陣からHLを通過してPAまでのカウンターアタックの速攻プレーの縦移動速度はWELが5.20±1.24m/s であり、UEFAWCLの6.59±1.32m/s との間に1.3m/s の有意差が認められた。
【結論】UEFAWCLと比較してWELの速攻プレー速度が1.0m/s 程度低く、縦移動速度では1.3m/s 程度低いことが明らかとなった。速攻技能要因ではドリブル速度が1.0m/s 程度低く、距離が12m程度短いことが明らかとなった。これらの速攻プレー特性の差異はUEFAWCLを到達目標水準とするWELの速攻プレーの数値目標となり、データ主導型のコーチングに有用なデータとなることが推察される。