[05バ-ポ-05] ヒッチ動作を打撃に取り入れた時のスイング動作の変化
近年、野球の打撃においてヒッチ動作(スイングを開始する前段階においてグリップを一度下げる動作)を取り入れている選手が見受けられるようになってきた。ヒッチ動作は昔から打撃スタイルの一つとして周知されているが、指導者の間でもヒッチ動作の有効性は賛否両論である。賛成的な意見としては、スイング前に予備動作をすることでより勢いのあるスイングを可能にすることや、投手の投球モーションに合わせて腕を上下させることでタイミングを合わせやすいことなどが挙げられる。一方で否定的な意見として、時間的制約がある中でグリップを下げてから上げるという動作を増やす事で構え遅れが生じ、バットがトップの位置まで上がりきらないためにスイングの再現性が低下し、自分の思うような打撃ができないことがあるため、打撃において必要最低限の動きが望ましいという考えから余分な動作であることが挙げられている。しかし、ヒッチ動作に関する研究は見受けられないため、ヒッチ動作の具体的な動作の特徴やその利点はあきらかになっていない。そこで本研究では、指導者間で賛否両論のあるヒッチ動作の特徴を解明することを目的とした。硬式野球部に所属する打撃時にヒッチ動作を導入している部員10名を対象にティー打撃を行い、踏み出し脚が地面に着いた時点を0 %、バットがボールに当たった時点を100 %として20 %ずつの局面における算出項目の値を抽出し、二元配置分散分析を行った。その結果、局面0 %と20 %で骨盤に対する肩の捻転差、局面0 %、20 %、40 %、60 %で肩角度、局面100 %でヘッド累積移動距離に有意な差がみられた。本研究では、時間的制約のないティー打撃で実験を行ったが、ヒッチ動作は打撃の際のタイミングについても賛否両論があるため、今後の課題として、投げられたボールを打ち返す実際のバッティングを想定した検討が必要だろう。