[スポーツ文化-SA-1] Sport and Inequality in Australia: Conflict and Sublation
<演者略歴>
一橋大学、同大大学院を経て一橋大学大学院社会学研究科教授。現在、一橋大学名誉教授、放送大学東京多摩学習センター所長・特任教授。研究テーマは、スポーツ政策(とくに、人々のスポーツ参加に関する政策)、地域のスポーツ実践、オーストラリアの社会とスポーツ。
一橋大学、同大大学院を経て一橋大学大学院社会学研究科教授。現在、一橋大学名誉教授、放送大学東京多摩学習センター所長・特任教授。研究テーマは、スポーツ政策(とくに、人々のスポーツ参加に関する政策)、地域のスポーツ実践、オーストラリアの社会とスポーツ。
オーストラリアの社会には「主流」のアングロ=ケルティック系の人々と移民や先住民との間に不平等が長く、そして根深く横たわっていたが、1970年代、政治主導で「白豪主義」から多文化主義に舵を切った。その後の道のりは決して平坦ではなかったとはいえ、現在に至るまでの彼の地の経験は今後への示唆を多く含んでいる。では、オーストラリアのスポーツは不平等にどのように向き合ってきたのだろうか。結論的に言えば、社会と同様に跛行的な道筋をたどり、かつ社会の動きに同期するばかりではなく時に逆のベクトルを示すことすらあった。本報告では、相互扶助の基盤としての移民コミュニティ、その場でのスポーツ活動が民族アイデンティティの拠り所であったが、そのことが「移民のスポーツ」としてサッカーが色眼鏡で見られる一因となったこと。オーストラリアン・フットボール・リーグの競技の場で人々の差別意識とその対抗が可視化され差別禁止条項の制定につながった事例などを取り上げる予定である。社会の不平等に対してスポーツではできないこと、スポーツだからこそ可能なこと。両者を截然と切り分けることは難しいが、その割り切れなさをも含み込んだ議論としたい。