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[生涯スポーツ-A-09] 障害者のスポーツ施設利用を阻害する要因の検討(ア,社)
体育施設運営者の抱く「予期的懸念」に着目して
障害者のスポーツ推進のためには,障害者専用スポーツ施設のみならず,公共スポーツ施設の障害者利用の増大が必要である。これまで施設の利用促進/阻害要因については主に物理的環境やソフト的な条件の整備や検討が行われてきた。それに対し,石井ら(2020)は,施設運営者へのインタビュー調査から,施設運営者が障害者の施設利用で起こる問題を先回りして想定してしまうことがあることを指摘した。それが障害者の施設利用を阻害する要因となっているとし,「予期的懸念」と名付けた。これは石井らが構築した概念であり,いまだ仮説に留まっており実証する必要がある。そのため本研究では,質問紙調査から,この「予期的懸念」を定量的に導き出し,どのような要因について予期的懸念を抱くのかを明らかにする。 本研究では,千葉県・東京都の公共スポーツ施設416箇所を調査対象として選定し調査依頼書を送付した。質問項目は施設の運営状況に関する9項目と,施設の障害者利用に対する取り組み(施設の物的条件,利用者の意識)に関する32項目を設定した。それぞれの項目の充実度と懸念度を4件法で回答を求めた。回答を得られた70箇所のうち,不備のある回答を除いた68施設(有効回答率16.9%)を分析対象とした。施設の状況についての懸念度と充実度についての各項目の回答から,①懸念/充実,②懸念/非充実,③非懸念/充実,④非懸念/非充実の4つに分類することができた。この4分類のうち,①は,運営者が施設の取り組みが充実していると捉えているにもかかわらず,障害者の利用に懸念を持っていることである。つまり,その取り組みについて,「運営者が先回りして持ってしまう」ものであり,これが石井らのいう「予期的懸念」であると捉えられた。以上の検討を踏まえ,本研究ではさらに,予期的懸念がどのような項目で抱かれているのか,施設のプロフィールで差異があるのかを検討した。