日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題A】共生社会の実現に向けた生涯スポーツ政策と協働システムをいかに構築するか

生涯スポーツ研究部会【課題A】口頭発表②

2023年8月30日(水) 10:20 〜 11:04 RY306 (良心館3階RY306番教室)

座長:内田 匡輔(東海大学)

10:35 〜 10:49

[生涯スポーツ-A-05] 運動部活動における体罰問題の解決に向けた教育環境の構築(保,教,社,心)

*霜触 智紀1、笠巻 純一2 (1. 宇都宮共和大学、2. 新潟大学)

【目的】近年、運動部活動の体罰問題が社会的に注目を集めている。この体罰問題の解決に向けて、発表者らは統計学的手法を用いて運動部活動の顧問が認知する体罰に関連する要因(以下、体罰関連要因)及び体罰行為に至るプロセスの解明に努めてきた。そこで本研究では、運動部活動における体罰問題の解決のための教育環境の構築に向けて、その支援方法を考察することを目的とした。【方法】これまでの研究で明らかとなった5つの体罰関連要因(霜触・笠巻、2022)と「運動部活動での指導のガイドライン」(文部科学省、2013)をもとに質的検討を行い、運動部活動における体罰問題の解決のために求められる支援策を提示した。【結果】1つ目には、「顧問の指導方針・信念」、「顧問の勝利至上主義的指導観」といった顧問に関する体罰関連要因へのアプローチが示され、生徒にとってのスポーツの意義についての理解を深めるための支援等が挙げられた。2つ目には、「外圧的指導環境」といった顧問を取り巻く指導環境である体罰関連要因へのアプローチが示され、顧問の教員だけに運営、指導を任せるのではなく、学校組織全体で運動部活動の目標、指導の在り方を考える体制を整えていくための運動部活動の経営的な支援等が挙げられた。3つ目には、「生徒・チームの目標未達成」、「生徒のネガティブな態度」といった生徒に関する体罰関連要因へのアプローチが示され、適切な指導方法、コミュニケーションの充実等により、生徒の意欲や自主的、自発的な活動を促す指導力を養う支援等が挙げられた。4つ目には、先に示したいずれの体罰関連要因にも関連するアプローチが示され、活動における指導の目標や内容を明確にした計画を策定するための内的・外的環境を整えるための支援等が挙げられた。【結論】体罰関連要因を基に適切なアプローチを検討及び実施していくことで体罰問題の解決につながるものと期待される。