日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

テーマ別研究発表

学校保健体育研究部会 » 【課題C】体育・スポーツ健康科学は学校保健体育の進展にいかに貢献できるか

学校保健体育研究部会【課題C】口頭発表②

2023年8月30日(水) 11:25 〜 12:24 RY202 (良心館2階RY202番教室)

座長:春日 晃章(岐阜大学)

11:25 〜 11:39

[学校保健体育-C-05] 幼児の遠投能力と家庭環境との複合的関連(教,測,発)

*大坪 健太1、春日 晃章2、清水 紀宏3、中野 貴博4 (1. 岐阜協立大学、2. 岐阜大学、3. 筑波大学、4. 中京大学)

本研究は、年長児を対象に遠投能力と家庭環境との複合的関連について明らかにすることを目的とした。 対象は、2市17園の年長児312名(男児177名、女児135名)およびその保護者であった。そのうち、データ欠損のない303名を分析対象とした。遠投能力を測定するためにソフトボール投げテスト(1号球)を実施した。テストにより得られた測定値は男女別にTスコア化して分析に用いた。家庭環境は、関連する先行研究を参考に質問紙を作成し、調査を実施した。調査票は、子どものスポーツ活動に対する価値観7項目(回答形式:5件法)、近隣の運動施設1項目(4件法)、スポーツ嗜好性2項目(4件法)、子育て意識5項目(5件法)および家庭におけるボール所持の有無1項目(2件法)の計16項目から構成された。遠投能力と保護者の運動・スポーツに関する価値観や家庭環境との関連について検討するため、Tスコア化したソフトボール投げテストの記録を従属変数、家庭環境に関する16項目を独立変数とする重回帰分析を実施した。 分析の結果、「子どもとスポーツのことを話す(β=0.21)」、「将来、スポーツで活躍してほしい(標準偏回帰係数β=0.17)」および「子どもとスポーツ観戦に出かける(β=0.14)」の3項目において有意な標準偏回帰係数が認められた(調整済みR2=0.13)。いずれも正の標準偏回帰係数を示しており、頻度あるいは期待の高さと遠投能力の高さが関連することが示唆された。また、「家庭におけるボール所持の有無」において有意な関連は認められなかったが、本研究対象の家庭においてボールを所持している割合はおよそ9割と高く、用具は充実している傾向が認められた。したがって、親子でのスポーツに関する会話やスポーツ観戦といった親子の関わりを充実させることが、子どもの遠投能力の向上に対して有用である可能性が示された。