日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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学校保健体育研究部会 » 【課題B】保健体育授業をいかに良質なものにするか

学校保健体育研究部会【課題B】口頭発表①

2023年8月30日(水) 10:20 〜 11:19 RY203 (良心館2階RY203番教室)

座長:岩田 英樹(金沢大学)

10:20 〜 10:34

[学校保健体育-B-01] ジェンダー分析による体育カリキュラム変革の可能性(教,社)

フォーカス・グループ・インタビューによる「体育嫌い」の研究を通して

*井谷 惠子1、三上 純2、井谷 聡子3 (1. 京都教育大学、2. 大阪大学大学院人間科学研究科、3. 関西大学)

【問題の所在】ジェンダード・イノベーションに象徴されるように、ジェンダーによる分析が科学・技術に変革と進展をもたらすことが明らかになっている。ジェンダー分析は、差別の是正やバイアスの解消といったレベルから、より積極的に科学・技術を発展させる視点と言える。これまでの体育科教育学研究では、男女別の集計さえないものが多く、男女差のある結果についてもその要因について検討が乏しい。体育の好き嫌いに関する研究の歴史は長く、「体育嫌い」の割合は中学生で17.5%(スポーツ庁、2022)と少なくない。さらに女子中学生で22.8%など、常に「男性よりも女性に体育嫌いの割合が高い」ことを示している。その要因として、能力主義など指導者の問題が指摘されるが、男女差の理由については概ね不問であり、女性が不得意で嫌いであるのは自明のこととして扱われてきた。また、要因分析や先行研究に基づく仮説や理論の検証など量的研究が中心で、設定された枠組みの外にある事実をつかめないことに限界があった。本発表では、「体育嫌い」のフォーカス・グループ・インタビューによる研究成果を通じて、ジェンダー分析の必要性を提示する。
【ジェンダー分析による「体育嫌い」の声】 H28年度から2期にわたる研究プロジェクトの成果であり、数本の論文や雑誌に公表済である。男女共通した要因として、体育が「身体やパフォーマンスが他者の目にさらされる場」「スポーツの特性としての競争・序列・記録が支配」、制度の変化にもかかわらず、実践では「技能中心の授業や評価」が根強いことが指摘できる。女性の声からは「男性基準で定められる規範」「女性の身体と(競技)スポーツ」の折り合いの悪さ、「隠すものとして扱われる生理への対応」など、男性の声から、「男はできて当たり前」という扱い、体育が「男らしさを競わせる場」となっていることなどが見出された。